セッション情報 パネルディスカッション2-1

生活習慣と消化器疾患:肝・胆

タイトル PD2-1-10:

アルコールが肝発癌に与える影響

演者 青木 智子(兵庫医科大学内科肝胆膵科)
共同演者 飯島 尋子(兵庫医科大学超音波センター), 西口 修平(兵庫医科大学内科肝胆膵科)
抄録 【目的・対象】多量飲酒者は肝硬変に進展しやすく,発癌する症例も知られている.2007年以降,当院で加療を受けたHCC374例中,NBNC肝癌は98例(25%)であり,うち飲酒量を詳細に知り得た90例を対象として,アルコールが肝発癌に与える影響を検討した.【方法】エタノール換算で1日80g以上飲酒していた症例を多量飲酒者(AL),20g以上80g未満の症例を少量飲酒者(sAL),20g未満の症例を飲酒なし(nAL)として検討に用いた.これらの背景肝因子・腫瘍側因子の比較検討を行い,発癌年齢に寄与する因子を多変量解析にて検討した.【結果・考察】NBNC肝癌90例のうち,AL30例(33%),sAL19例(21%),nAL41例(45%)であった.nALのうち,画像的あるいは組織学的にNASHと診断された症例は11例(27%),DM・肥満・脂肪肝を認めNASH疑診となった症例は18例(44%),発癌の原因を特定し得なかった症例が12例(29%)であった.AL/sAL/nALの背景肝因子の比較では,初発年齢,DM・脂肪肝の合併に差はなく,ALでは肝硬変に至っている症例が有意に多かった(P=0.012).またnALは有意に女性が多かった(P<0.001).腫瘍側因子の比較では,3群に大きな差を認めなかった.次に,発癌年齢に相関する因子を単変量解析で検討した.性別,BMI,脂肪肝,DM,HBcAb,血小板などは初発年齢と相関せず,飲酒量が多く(P=0.011),脾腫(P=0.008)があり,T-bil(P=0.005)が高値の症例ほど早期に発癌する傾向を認めた.これらの因子を用いて重回帰分析を行ったところ,発癌年齢と有意に相関する変数はT-bil[mg/dl](R=-5.96,P=0.001),飲酒量[g/day](R=-0.0424,P=0.012)であることが示された.飲酒量が100g/day増えると4.24年発癌が早まることが示された.【結語】重回帰分析によって,NBNC肝癌では多量飲酒により発癌年齢が早まる可能性が示唆された.
索引用語