セッション情報 パネルディスカッション2-1

生活習慣と消化器疾患:肝・胆

タイトル PD2-1-13[追加]:

クエン酸モサプリド服用は食後血清GLP-1およびインスリン濃度を上昇させる

演者 丸岡 大介(千葉大学消化器・腎臓内科学)
共同演者 新井 誠人(千葉大学消化器・腎臓内科学), 横須賀 收(千葉大学消化器・腎臓内科学)
抄録 【目的】クエン酸モサプリドは本邦で広く用いられてきた消化管運動機能改善剤であり,大規模無作為で機能性胃腸症に対する有効性が判明して以降(Hongo M et al. J Gastroenterol Hepatol 2012),その重要性が再認識されている.また本剤は生活習慣病の一つとされる2型糖尿病に高頻度で合併する便通障害における有効性も明らかとなっているほか(Ueno N et al. Diabetes Res Clin Pract 2010),血糖改善およびHbA1cの有意な低下作用も示されており,それは筋でのインスリン感受性上昇によりグルコース利用が増加するためとされているが,その要因は不明瞭であった(Ueno N et al. Diabetologia 2002).今回我々はこの作用がGLP-1を介した作用であると仮説を立て,これを検証した.
【方法】健常男性12名(平均年齢31.9±7.8歳).食前,食後90分に採血を行い,血糖・血清インスリン・グルカゴン・GLP-1を測定した.クエン酸モサプリドを毎食後5mg(一日15mg)2週間服用した後に,食前,食後90分にて採血を行い,同様の測定をし,クエン酸モサプリド投与による影響を検討した.本研究は千葉大学大学院医学研究院倫理委員会の承認を得て行われた.
【成績】全例において副作用なくクエン酸モサプリドの内服を終了した.観察期間中の体重の有意な増減は認めなかった.食後血清GLP-1値はクエン酸モサプリド2週間服用前,服用後でそれぞれ3.7±1.2,4.8±2.2 pmol/lであり,服用後の方が有意に高値であった(P<0.05,paired t test).また食後血清インスリン値もそれぞれ服用前34.1±28.4,服用後45.6±41.6 μIU/mlと,服用後の方が有意に高値であった.一方で食前値は,服用前後でいずれも有意差はなかった.
【結論】健常男性における,クエン酸モサプリドの2週間の常用量服用にて,食後血清インスリン値とGLP-1値の有意な上昇が認められた.このことから,同剤の消化管蠕動運動調整作用にはGLP-1も関連していること,および糖代謝への関与が示唆され,その意義は大きいと思われた.
索引用語