セッション情報 パネルディスカッション2-2

生活習慣と消化器疾患:消化管・膵

タイトル PD2-2-1:

H.pylori関連慢性胃炎・胃癌発生に対する喫煙の影響

演者 井上 泉(和歌山県立医科大学医学部第二内科)
共同演者 加藤 順(和歌山県立医科大学医学部第二内科), 一瀬 雅夫(和歌山県立医科大学医学部第二内科)
抄録 【目的】Helicobacter.pylori(HP)関連胃炎が,胃癌発生のメインルートである「萎縮性胃炎→腸上皮化生→胃癌発生」過程の主要な推進力であることは広く認識されている.また,胃癌と喫煙との関連について,IARCにより喫煙は胃癌リスクを高める要因であると認定されているが,HP関連胃炎の病期の進行により,胃内腔環境は高酸から低酸~無酸に変化すると共に,標的となる上皮組織も,胃型から腸型へと大きく変化を遂げる.従って,喫煙の影響をHP関連胃炎の各病期に分けて検討する事は理にかなった事と考えられる.上記の観点から,HP関連胃炎・胃癌発生と喫煙との関連について検討したので報告する.【方法】1.健常人中年男性4585人からなる職域コホートを対象に,平均(SD)11.7(4.4)年の長期観察研究を行う事で,喫煙の胃癌発生に対する影響を検討した.HP抗体・血清ペプシノゲン値を指標にHP関連胃炎の病期を評価し,HP関連胃炎の病期別に喫煙がHP関連胃炎活動度,萎縮性胃炎進展,胃癌発生に与える影響について検討した.【結果】HP未感染群では,喫煙は胃外分泌促進作用を発揮するのに対し,感染群では,喫煙は軽度萎縮群において炎症を有意に軽減させた.高度萎縮群においては,萎縮性胃炎進展に作用する傾向が観察され,これらは喫煙本数の増加に伴い容量依存性に増強された.胃癌発生に関しては,軽度萎縮群では喫煙によるリスク抑制傾向が認められたが,有意ではなかった.一方,高度萎縮群においては喫煙による胃癌発生リスク上昇傾向が認められ,極度に進展した萎縮により胃癌発生年率が0.5%に至った終末期胃炎群を除く集団では本数に相関した有意なリスク上昇が認められた.【結論】HP関連胃炎・胃癌発生に対する喫煙の影響はHP関連胃炎の病期により変動すると考えられた.喫煙は軽度萎縮性胃炎群の胃炎活動度を低下させ,終末期以外の高度萎縮性胃炎群に対しては,萎縮性胃炎進展・胃癌発生に関与している可能性が強く示唆された.
索引用語