セッション情報 パネルディスカッション2-2

生活習慣と消化器疾患:消化管・膵

タイトル PD2-2-6:

本邦における大腸腺腫・大腸鋸歯状病変と喫煙習慣・BRAF遺伝子変異の検討

演者 五十嵐 央祥(札幌医科大学内科学第一講座)
共同演者 吉井 新二(恵佑会札幌病院), 能正 勝彦(札幌医科大学内科学第一講座)
抄録 【目的】欧米における喫煙習慣と大腸癌の報告ではBRAF遺伝子変異陽性大腸癌で喫煙との相関が報告されている.またBRAF変異陽性大腸癌の前癌病変として注目されている大腸鋸歯状病変は病理組織学的に鋸歯状構造を有する病変の総称であり,過形成性ポリープ(HP),sessile serrated adenoma/P(SSA/P),鋸歯状腺腫(TSA)等が含まれる.これら大腸鋸歯状病変においても喫煙との相関が報告されているが,多症例を用いて,性差や年齢,腫瘍径,発生部位,組織型,遺伝子変異等の因子を考慮して,多変量解析で喫煙との相関を検討した報告例はない.【方法】内視鏡的,外科的に切除され,喫煙歴を確認できた435症例の大腸腫瘍[大腸鋸歯状病変(HP:112例,SSA/P:112例,TSA:83例),腺腫:28例,癌:100例].それらを対象にパイロシークエンス法でKRAS,BRAF遺伝子変異を解析.喫煙と臨床病理学的・遺伝子学的因子との相関を検討した.【成績】喫煙習慣はHP(64%),SSA/P(64%),TSA(48%),腺腫(36%),癌(28%)で認められた.BRAF変異はHP(47%),SSA/P(87%),TSA(65%),腺腫(3.6%),癌(6%)で陽性であった.大腸腺腫・大腸鋸歯状病変を対象とした多変量解析では喫煙と有意に正の相関を認めた因子は性差(男性>女性:p<0.01),年齢(60歳以下>60歳以上:p<0.01),組織型(HP&SSA/P>腺腫&TSA:p=0.017)であった.【結論】本邦における喫煙と大腸腺腫・大腸鋸歯状病変を対象に検討したところ腺腫やTSAと比較して,HPとSSA/Pでは喫煙者が多く,組織型によって差が認められた.これらの結果から禁煙によってHPやSSA/Pの発生を予防することで,大腸癌発症リスクを軽減できる可能性が示唆された.
索引用語