セッション情報 パネルディスカッション2-2

生活習慣と消化器疾患:消化管・膵

タイトル PD2-2-8:

喫煙は慢性膵炎の増悪因子である―慢性膵炎全国調査より―

演者 廣田 衛久(東北大学病院消化器内科)
共同演者 下瀬川 徹(東北大学病院消化器内科)
抄録 【背景】慢性膵炎は非可逆性に進行する難病であり,飲酒は明らかに慢性膵炎を進行させる因子である.最近喫煙が単独であるいは飲酒との相乗効果で慢性膵炎を進行させることが欧州から報告されたが,本邦からの報告はまだない.【方法】厚生労働省難治性膵疾患研究班で行った最新の全国疫学調査のデータを用いて,慢性膵炎患者の合併症に対する喫煙の影響を調べた.【結果】調査票で喫煙歴が明らかだったのは,慢性膵炎確診・準確診898症例(喫煙歴ありは603例,喫煙歴なしは295例)であった.患者全体の喫煙率は67.1%(男性75.6%,女性29.9%)であった.喫煙歴が明らかなアルコール性慢性膵炎患者は563症例(男性519例,女性44例)であり,喫煙率は83.7%(男性84.4%,女性75.0%)と高かった.逆に飲酒歴のない慢性膵炎患者216症例(男性110例,女性106例)の喫煙率は23.6%(男性37.2%,女性9.4%)と低かった.次に,飲酒の影響を排除して喫煙が慢性膵炎の合併症へ及ぼす影響を検討するために,飲酒歴のない慢性膵炎患者で,喫煙の有無による合併症率(喫煙ありvsなし)を検討した.膵石,疼痛,消化不良の合併は喫煙歴の有無で差が無かったが,喫煙歴のある患者で有意に糖尿病合併が多かった(57.1% vs 24.8%,p<0.0001).次に,喫煙と飲酒の相乗効果を検討するためにアルコール性慢性膵炎患者で同様に喫煙歴の有無による合併症率(喫煙ありvsなし)を検討した.膵石(87.6% vs 74.2%,p=0.0118)と糖尿病(48.1% vs 34.8%,p=0.0266)の合併は有意に喫煙歴のあるアルコール性慢性膵炎患者で多かった.また,疼痛は有意ではなかったが,喫煙者で多い傾向であった(69.0% vs 58.9%,p=0.0661).一方,消化不良は喫煙の有無で合併率に差がなかった.【考察】慢性膵炎患者では喫煙率が高く,特にアルコール性では著しく高かった.喫煙は糖尿病合併との関連が示唆された他,飲酒との相乗作用により,膵石や疼痛の合併に影響することが示唆された.
索引用語