セッション情報 パネルディスカッション2-2

生活習慣と消化器疾患:消化管・膵

タイトル PD2-2-10:

血清膵型アミラーゼとALDH2遺伝子一塩基多型および飲酒習慣の解析

演者 牧野 直彦(山形大学消化器内科)
共同演者 斎藤 貴史(山形大学消化器内科), 上野 義之(山形大学消化器内科)
抄録  血清膵型アミラーゼは多くの膵疾患で異常値を示すが,一般住民検診における膵型アミラーゼと遺伝子多型に関する研究は少ない.【目的】膵型アミラーゼに関連する生活習慣および遺伝子多型を明らかにすること.【方法】山形大学21世紀COEプログラム「地域特性を生かした分子疫学研究」に参加した一般住民2970人(男/女:1343/1626人)を対象に生活習慣を調査し,膵型アミラーゼの測定と一塩基多型(SNP)タイピングのスクリーニングを施行した.検定には分散分析を用いた.【成績】一次スクリーニングでは膵型アミラーゼと相関するSNP候補としてアルデヒド脱水素酵素2(ALDH2)のrs671が検出された(p<0.000165).膵分泌性トリプシンインヒビター遺伝子やカチオニックトリプシノーゲン遺伝子に関連する有意なSNPは検出されなかった.次にrs671周辺で9個のSNPを検索したところ,rs671のみが有意差を示した.rs671におけるmajor alleleはグアニン,minor alleleはアデニンであり,解析対象の2970人中2967人でタイピングが得られ,各遺伝子型はGG1977人,GA898人,AA92人であった.飲酒習慣は受検者の36.5%に認められ,飲酒と膵型アミラーゼとの解析では,非飲酒群に対して飲酒群が有意に低値を示した.次いで,ALDH2の各遺伝子型とアルコール摂取量を検討したところ,GG型のアルコール摂取量はGA型に比して有意に多く(P<0.0002),AA型ではアルコール摂取者を認めなかった.飲酒群における膵型アミラーゼ値の比較ではGG型がGA型に比して有意に低値を示した(p=0.031).非飲酒群においては膵型アミラーゼ値と遺伝子型には相関が認められなかった.【結論】一般住民検診において,飲酒習慣を規定するALDH2多型は膵型アミラーゼと相関した.膵型アミラーゼ低下の一因として,アルコール摂取による非顕性膵障害が存在している可能性があり,慢性膵炎などの慢性膵障害を対象とした2次検診が必要と考える.
索引用語