セッション情報 パネルディスカッション3-1

高齢者消化器疾患の現状と対策:消化管

タイトル PD3-1-1:

高齢者食道癌の臨床的特徴と治療上の問題点および対策に関する検討

演者 千野 修(東海大学消化器外科)
共同演者 島田 英雄(東海大学大磯病院外科), 小澤 壯治(東海大学消化器外科)
抄録 [目的]近年,本格的な高齢化社会を向かえて高齢者食道癌患者も増加している.今回,高齢者食道癌の臨床的特徴および治療上の問題点と対策について検討した.[対象と方法]2004年1月~2007年12月の4年間に教室において治療し5年間経過を追えた455例の食道癌患者を対象とした.75歳以上の87例(19.1%)を高齢者群,75歳未満の368例(80.9%)を非高齢者群に分類し比較検討した.最高齢は88歳,年齢中央値は高齢者群77歳,非高齢者群66歳である.[結果]高齢者群では非高齢者群に比較して循環器や脳血管疾患を中心に併存疾患が48.3%:35.6%と有意に多く,複数併存疾患合併率が23.0%:11.7%と有意に高値を示した.重複癌は同時性・異時性ともに両群間に差はなかった.治療方法については高齢者群では内視鏡治療の割合が47.1%:35.1%と有意に高く,外科的切除術の割合が43.7%:62.0%と有意に低下していた.高齢者群では標準術式である右開胸開腹胸部食道切除術・頸部吻合の割合が81.6%:94.3%と有意に低下していた.また,経食道裂孔的切除など縮小手術の割合が増加し,リンパ節郭清範囲も縮小傾向を示した.両群間に予後や術後合併症総発生率など治療成績に差はないが,高齢者群では術後肺炎発症率が21.0%:7.4%と有意に高値を示した.手術適応と術式選択の慎重な判断によって高齢者群においても外科的切除術も比較的安全に施行できていた.死亡原因は原病死率に差はないが他病死率は高齢者群で10.3%:3.0%と有意に高値を示した.全生存率での5年累積生存率は各群間に差は認めななかった.[結語]高齢者食道癌の診療では腫瘍因子に加え併存疾患や生理機能など宿主因子を慎重に判断した上で患者の意欲や希望を尊重する必要がある.画一的な治療戦略は避け個別化治療を心掛けるべきであり,治療の安全性とQOLの維持・向上を念頭に置くことが重要と考えられる.
索引用語