セッション情報 パネルディスカッション3-1

高齢者消化器疾患の現状と対策:消化管

タイトル PD3-1-2:

高齢者胃腫瘍におけるESD偶発症の検討

演者 小林 沙代(岡山大学消化器内科)
共同演者 河原 祥朗(岡山大学消化器内科), 岡田 裕之(岡山大学光学医療診療部)
抄録 【背景及び目的】近年の高齢化につれて,高齢者の胃腫瘍を発見する機会が増加しており,高齢者におけるESDも増加している.一般に,ESDの低侵襲性,安全性は確立されてきたが,高齢者におけるESDの有用性,及び偶発症発症の背景を検討する.【対象】2012年6月までに当院にてESDを施行した823症例.【方法】対象群を80歳以上(A群)144症例,70歳以上80歳未満(B群)338症例,70歳未満(C群)341症例の3群とした.各群における病変の背景,後出血及び穿孔に関して検討した.病変の背景として胃の状態(通常胃,胃管及び残胃),部位(U,M,L),瘢痕,腫瘍径(20mm以上)につき検討した.【結果】病変の背景(状態,部位,瘢痕,腫瘍径)と各年齢群の間には有意な関連を認めなかった.内視鏡的止血を要した後出血はA群2/144(1.4%)B群13/338(3.9%)C群16/341(4.7%),うち輸血を要した後出血はA群0/2(0.0%)B群2/13(15.4%)C群5/16(31.2%)と,高齢者群で偶発症率は低い傾向を認めた.穿孔はA群10/144(6.9%)B群16/338(4.7%)C群25/341(7.3%),と有意差を認めなかったが,うち緊急手術を要した穿孔はA群3/10(30.0%)B群1/16(6.3%)C群0/25(0.0%)と高齢者群で高率であった.病変の背景と偶発症の解析では,後出血に関しては腫瘍径と関連が認められた.穿孔に関しては部位(残胃>胃管>U>M>L)と関連が認められた.緊急手術を要した穿孔に関しても部位(残胃>U)と関連が認められた.病変背景別に年齢群と偶発症発症率を検討したところ,残胃症例にて年齢が高い群ほど緊急手術を要する穿孔例が有意に多かった.【結論】ESDに伴う偶発症の発症率は,後出血に関しては高齢者群では低く,穿孔は年齢との関連は認められなかった.しかし穿孔発症時の緊急手術は高齢であるほど高率であり,その病変の背景として残胃癌で有意に高率であった.
索引用語