セッション情報 | パネルディスカッション3-1高齢者消化器疾患の現状と対策:消化管 |
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タイトル | PD3-1-3:当科における高齢者早期胃癌に対するESDの現状 |
演者 | 宮澤 正樹(富山県立中央病院内科) |
共同演者 | 松田 充(富山県立中央病院内科), 野田 八嗣(富山県立中央病院内科) |
抄録 | 【目的】近年,高齢者に対してもESDが行われるようになっている.当科における高齢者早期胃癌に対するESDの安全性と長期予後について検討した. 【方法】対象は2003年7月~2012年7月に胃ESDを施行した893例.これらを非高齢群(64歳以下),前期高齢群(65~74歳),後期高齢群(75歳以上)に分類し,基礎疾患および抗血栓剤内服の有無,術中の呼吸循環動態変動の有無,一括完全切除率,偶発症,入院日数について比較した.また,後期高齢群においてKaplan-Meier法によるESD後累積生存率を,年齢・性別を一致させたコホート生存率表から計算した相対生存率と比較した. 【結果】対象の内訳は非高齢群242例,前期高齢群326例,後期高齢群325例で最高齢は95歳であった.基礎疾患保有率および抗血栓剤内服率は非高齢群41.3%,6.6%,前期高齢群57.9%,15.6%,後期高齢群75.3%,28.0%と加齢に伴い高率で,後期高齢群において抗血小板剤休薬中にSMA血栓症を1例,心原性脳塞栓症を1例認めた.術中の呼吸循環動態変動(SpO2<90%又はsBP≧180mmHg又は<80mmHg)は非高齢群36.8%,前期高齢群42.9%,後期高齢群49.2%と加齢に伴い高率であったが,心肺系合併症は前期高齢群における肺炎1例のみであった.一括完全切除率,穿孔率,後出血率,入院日数は,非高齢群91.3%,5.4%,3.7%,7.1±1.7日,前期高齢群85.6%,2.7%,2.7%,7.2±2.4日,後期高齢群87.3%,4.9%,3.1%,7.1±2.2日と有意差は認めなかった.後期高齢群におけるESD後累積5年生存率は76%(原病死1例,他病死28例)と相対5年生存率(72%)と同等だった.男女別に検討すると,女性でのESD後累積5年生存率(97%)は相対5年生存率(81%)に比し良好であり,男性でのESD後累積5年生存率(69%)は相対5年生存率(68%)と同等だった. 【結論】高齢者早期胃癌に対しても非高齢者と同等の安全性をもってESDは施行可能であった.後期高齢者でもESDによる生命予後の改善が期待できると考えられ,個々の症例に応じて積極的にESDを考慮すべきと考えられた. |
索引用語 |