抄録 |
【背景】本邦における高齢化に伴い,高齢者大腸癌症例も増加すると考えられるが,その特徴と治療成績は明らかでない.【対象】当科において1991~2007年に手術を施行したStage I~IV大腸癌1572例.【検討1】75歳未満(A群)と75歳以上(B群)の2群間で,臨床病理学的特徴,予後について検討した.【結果1】A群1259例,B群313例における年齢の中央値は62歳,79歳であった.臨床病理学的因子のうち,組織型(P=0.023),部位(P=0.0001),リンパ節転移(P=0.0069),病期(P=0.0004)に有意差を認め,B群では高分化腺癌,結腸癌が多く,リンパ節転移,遠隔転移は少なかった.予後では,Stage I(P=0.0018),II(P<0.0001)でA群が有意に良かったが,Stage III,IVにおいては有意差はなかった.【検討2】70~74歳,75~79歳,80歳以上の3群間の予後を病期毎に比較検討した.【結果2】Stage I,II,III,IVいずれの病期においても,3群間の予後に有意差はなかった.【検討3】2005年から2011年に手術した70歳以上の大腸癌300例についてA群B群で合併症の有無を検討した.【結果3】術前併存疾患率はA群37.6%,B群46.5%(P=0.13),術後合併症率は30.7%,38.3%(P=0.18)であった.術前併存心血管疾患の有無はB群で有意に高かった(P=0.019).術後創感染,縫合不全,イレウスの発生率には両群間に有意差を認めなかった.【結語】75歳以上の高齢者における大腸癌の特徴は,結腸癌が多く,リンパ節転移や遠隔転移が少ないことであった.70歳以上の場合,年齢による術後の生存率に差はなく,術後合併症発生率にも差を認めなかった.年齢のみで手術の適応を決めるべきではなく,個々のADL等を考慮し,手術の可否を決定すべきである. |