セッション情報 パネルディスカッション3-1

高齢者消化器疾患の現状と対策:消化管

タイトル PD3-1-6:

高齢者に対する腹腔鏡下大腸癌手術の成績―腹腔鏡下手術は本当に低侵襲なのか

演者 市原 隆夫(西宮市立中央病院消化器センター外科)
共同演者 岡田 かおる(西宮市立中央病院消化器センター外科), 左近 賢人(西宮市立中央病院消化器センター外科)
抄録 (はじめに)腹腔鏡下手術は低侵襲が利点とされるが,現状は高リスク,高齢者に対しては回避されている.当科では2007年以後全大腸癌例をLC適応(96%)としているが,以前の全例開腹(OC)適応期間の症例と検討した.(対象,方法)2007年以後のLC327例(開腹移行率1.8%),75歳以上(LCo)67例,以下(LCu)167例を対象とし,2000年1月から2004年12月までのOC234例,75歳以上(OCo)40例,以下(OCu)194例を対照とし,臨床病理学的特徴と術前,術後一日目の血中alb値,好中球数,リンパ球数の変動を検討.さらにD2以上郭清の結腸癌例(LCo=77,LCu=124,OCo=31,OCu=86)に限定した検討も加えた.(結果-全例)平均年齢はLC69.2歳,OC68.4歳.stageの分布は両群間に差はなかった.占拠部位はLC結腸65%,OC結腸71.3%,郭清度はD2以上がLC87.0%,OC76.1%とLCは結腸が多く,郭清度が高い傾向にあった.平均手術時間はLC276.1分,OC192.2分,平均出血量LC129.1ml,OC268.7mlとLCは手術時間が長く出血量は少なかった.術後入院期間中央値はLC10日,OC22日.創感染を除く術後合併症発生率(%)はLC=6.4,OC=13.4.入院中死亡LCなし,OC2名とLCで良好,術前,術後一日目の血液中alb濃度平均減少率(%)はLCo=77.9±10.7,LCu=77.9±10.0,OCo=70.0±26.2,OCu71.4±32.2,好中球増加率(%)はLCo=197.5±110.5,LCu=228.5±201.2,OCo=248.2±482.4,OCu=188.0±93.8,リンパ球数の減少率(%)はLCo=74.7±47.3,LCu=79.2±98.4,OCo=87.7±60.4,OCu,=71.4±33.8で,alb値減少率はLCの両群が少なかったが,好中球数,リンパ球数は変動が大きく不定であった.(結果-D2,結腸癌)創感染を除く合併症発生率(%)はLCo=4.3,LCu=6.8,OCo=17.4,OCu=8.5とOCoで著明に高率.血中alb値の減少率(%)はLCo=76.8±9.5,LCu=78.2±10.9,OCo=67.7±29.7,OCu70.6±22.8,とOCで大きく,特に高齢者の減少が著明であった.(結語)高齢者大腸癌に対するLCの検討を同一施設のバイアスのない状態の別期間で検討した.高齢者大腸癌手術ではLCで良好な術後が期待された.
索引用語