セッション情報 パネルディスカッション3-1

高齢者消化器疾患の現状と対策:消化管

タイトル PD3-1-8:

高齢者における出血性胃十二指腸潰瘍の特徴と治療成績

演者 樋口 徹(佐賀大学医学部内科)
共同演者 山口 太輔(佐賀大学医学部内科), 藤本 一眞(佐賀大学医学部内科)
抄録 【目的】高齢化に伴って合併症を有する症例や多くの薬剤を服用する症例が増加しており,それに伴い高齢者の出血性胃十二指腸潰瘍が問題となっている.今回,高齢者出血性胃十二指腸潰瘍の特徴および止血成績について,当院で経験した症例を中心に検討した.【対象】1999年1月1日より2011年12月31日の13年間に内視鏡的止血術を施行した461例を対象に検討した.男性327名,女性134名で,平均年齢は62.9±16.8歳であった.65歳以上の高齢者231名について,64歳以下の若年者は230名と比較検討した.前期(1999~2005年)における65歳以上の高齢患者は100名と,後期(2006~2011年)における65歳以上の高齢患者は131名での比較も施行した.【成績】若年者と比較して,高齢者では,1)ピロリ菌陽性潰瘍の比率低下,2)女性比率の増加,3)入院時Hb値の低値,4)基礎疾患合併率の増加,5)薬剤服用率(低用量アスピリン,抗血栓薬,ステロイド)の増加,等が特徴的であった.内視鏡止血率,1ケ月以内の死亡率には差がなかった.81歳以上の高齢者で検討してもこの傾向は同様であった.心疾患,脳血管疾患や整形外科疾患などの基礎疾患を保有する患者が多く内服している内服薬が高齢者の潰瘍の危険因子になりえるかを多変量解析で解析すると低用量アスピリンが最大の危険因子となるという結果だった.前期と後期で比較すると後期の出血性胃十二指腸潰瘍は,1)患者数増加,2)ピロリ菌陽性比率低下,3)低用量アスピリン内服率の増加傾向,であった.【結語】高齢者の出血性胃十二指腸潰瘍は時代とともに増加しつつある.発症原因もピロリ菌関連から低用量アスピリンを内服している心疾患や脳血管疾患を基礎疾患にもつ事によるものへと変化してきている.高齢者の出血性胃十二指腸潰瘍患者は入院時Hb値が低く,重篤な状態で搬送されることもあるが,適切な管理を行えば,若年者同様に治療を行うことが可能である.
索引用語