セッション情報 パネルディスカッション3-2

高齢者消化器疾患の現状と対策:肝胆膵

タイトル PD3-2-3:

高齢者肝癌症例の特徴と予後についての検討

演者 田浦 直太(長崎大学病院消化器内科)
共同演者 市川 辰樹(長崎大学病院消化器内科), 中尾 一彦(長崎大学病院消化器内科)
抄録 【目的】近年,B型慢性肝疾患(HBV),C型慢性肝疾患(HCV)に対する治療の進歩,非B非C肝癌症例(NBNC)の増加に伴い,高齢者肝癌症例の特徴に変化がみられる.本研究では,肝癌症例における高齢者肝癌の特徴について検討を行った.【対象】2002年より2011年までの期間,当科関連施設において肝癌と診断され,HBs抗原,HCV抗体及びTNM stage不明例を除外した2,370例を対象とした.これらの症例を現役群(64才以下)716例,前期高齢者群(65-74才)881例,後期高齢者群(75-84才)704例,超高齢者群(85才以上)69例に分類し検討を行った.【結果】肝癌症例における65才以上に寄与する因子をロジスティック回帰分析による多変量解析を行ったところ,女性(p=<0.001 HR2.20),BMI=>25(p=0.035 HR0.35),飲酒歴(常習飲酒:p=0.002 HR0.64;多量飲酒:p=<0.001 HR0.36),Child-Pugh grade(B:p=0.016 HR0.68;C:p=<0.001 HR0.32),hepatitis virus(HCV:p=<0.001 HR9.12;HBV+HCV:p=0.005 HR4.32;NBNC:p=<0.001 HR11.28),ALT(>46IU/l:p=<0.001 HR0.53)であった.さらに,ロジスティック回帰分析で有意であった因子を各世代間で検討すると,超高齢者群では,その他の群と比較しBMI(p=<0.001),ALT(p=<0.001)が有意に低値,背景肝疾患ではNBNC(p=0.001)の症例が有意に多かった.また,予後と年齢の関係についてTNM stage別にKaplan-Meier法を用い検討したところ,TNM stage Iでは,超高齢者群と比し前期高齢者群(p=0.003),後期高齢者群(p=0.031)の生存予後が有意に良く,TNM stage IIでは,超高齢者群と比し現役群(p=0.005),前期高齢者群(p=0.041)の生存予後が有意によかったのに対し,TNM stage IIIもしくはIVでは,世代間で予後に相違は見られなかった.【結論】高齢者肝癌症例の特徴は,女性,BMIが低値,飲酒量が少なく,肝予備能が良好な症例であった.また,超高齢者では,TNM stage IもしくはIIにおいて予後が不良であり,治療の選択を慎重に行う必要性があると考えられた.
索引用語