セッション情報 パネルディスカッション3-2

高齢者消化器疾患の現状と対策:肝胆膵

タイトル PD3-2-6:

高齢者原発性胆汁性肝硬変の臨床病理学的特徴

演者 浪崎 正(奈良県立医科大学消化器・内分泌代謝内科)
共同演者 吉治 仁志(奈良県立医科大学消化器・内分泌代謝内科), 福井 博(奈良県立医科大学消化器・内分泌代謝内科)
抄録 【目的】原発性胆汁性肝硬変(PBC)は中年女性に好発することが知られているが,高齢化社会の進行とともに偶発的な肝機能異常を契機として診断される高齢者PBCが増加している.今回は,当科で経験したPBC症例を肝生検時年齢が65歳未満の非高齢者と65歳以上の高齢者に分け,高齢者PBC患者の病態および臨床的特徴について検討した.【方法】1991年1月から2010年12月の20年間に当科で病理学的にPBCと診断し得た122例を対象に,臨床背景,組織学的病期(Scheuer分類),進展様式から見た臨床病型,自己免疫性肝炎(AIH)および原発性肝癌(HCC)合併率について非高齢者群と高齢者群の2群間で比較検討を行った.【結果】対象患者の内訳は,非高齢者93例(男/女=12/81:平均年齢52.0±8.7歳),高齢者29例(男/女=6/23:平均年齢70.5±5.3歳)であり,当科においても全国集計同様中年以降の女性に好発していた.診断時の組織学的病期は早期(stage 1,stage 2)は非高齢者が高齢者に比して多く,逆に進行期(stage 3,stage 4)の割合は高齢者で高い傾向が認められた.臨床病型の検討で緩徐進行型は非高齢者で高率である一方(P<0.05),門脈圧亢進型は高齢者で非高齢者に比して有意に高率であった(P<0.05).なお,無症候型,肝不全型は両群間で有意差を認めなかった.また,AIH合併率は非高齢者で高齢者に比べ高い傾向にあったが,HCC合併率は逆に高齢者で有意に高率であった(P<0.01).HCC合併6例のうち,2例の非進行期(stage 2)症例はいずれも高齢者であった.【結論】高齢者PBC患者では,非高齢者に比べて診断時に進行例が多い傾向にあり,門脈圧亢進症型やHCC合併など重篤な臨床所見が有意に高率であった.高齢者であっても積極的に肝生検を行い,病態進展抑制のため早期に薬物介入を行うことが重要であると考えられた.
索引用語