セッション情報 パネルディスカッション3-2

高齢者消化器疾患の現状と対策:肝胆膵

タイトル PD3-2-7:

高齢者に対する肝切除術後の肝再生不全の機序解明とその対策

演者 宇都宮 徹(徳島大学外科学)
共同演者 山田 眞一郎(徳島大学外科学), 島田 光生(徳島大学外科学)
抄録 【背景と目的】高齢者に対する肝切除術後の再生能は非高齢者と比較して低下しており,適応決定や術後管理に注意を要する.加齢肝において加齢指標蛋白質SMP30の低下,p16増加による肝再生抑制といった加齢特有の変化が報告されている.今回我々は加齢肝における肝再生低下と加齢指標マーカーに着目し,マウスを用いた基礎的検討に加え,肝切除症例における臨床的検討を行いその関係について報告する.【方法】(1)基礎的検討:雄性balb/cマウスを用い8週齢以下を若年群(n=5),16か月以上を高齢群(n=5)として70%肝切除を施行した.肝切除前後の加齢指標マーカー(SMP30,p16,p66,SIRT1)をreal time PCRにて測定し,肝切除後肝障害をAST,ALT,LDH,T-Bilで,肝切除術後再生を残肝体重比及びPCNA labeling indexで経時的に比較検討した.(2)臨床的検討:肝切除99例を用い60歳以下を若年群(n=45),70歳以上を高齢群(n=54)として肝内加齢指標マーカー(SMP30,p16,p66,SIRT1)及び肝再生関連因子(HGF,c-MET)の発現をreal time PCRにて測定した.【結果】(1)基礎的検討:肝切除前ではSMP30は高齢群で低値,p66及びp16は高齢群で高値であった.肝切除後48時間以降では高齢群で有意に肝再生が遅延し,PCNA labeling indexも低値であった.肝切除後では高齢群でSMP30が低値,p16が有意に高値であった.AST,ALT,LDH,T-Bilはいずれも高齢群で高値であり,肝切除後肝障害が高度であった.(2)臨床的検討:高齢群において肝内ではp16が高齢群で高値であり,HGF及びc-METは高齢群で低値であった.【結語】加齢肝における肝切除後の肝再生能低下に関する機序として加齢指標マーカーであるSMP30,p16やHGF,c-Metが関与していると考えられた.これらの分子は加齢肝における再生不全の治療ターゲットとして期待される.
索引用語