セッション情報 パネルディスカッション3-2

高齢者消化器疾患の現状と対策:肝胆膵

タイトル PD3-2-10:

高齢者急性膵炎の疫学的検討

演者 菊田 和宏(東北大学消化器病態学)
共同演者 正宗 淳(東北大学消化器病態学), 下瀬川 徹(東北大学消化器病態学)
抄録 【目的】高齢者急性膵炎の臨床像は不明な点が多く,年齢を考慮した治療法は確立していない.全国調査の結果をもとに,高齢者急性膵炎の臨床的特徴を明らかとすべく検討した.
【方法】厚生労働省難治性膵疾患に関する調査研究班により,2007年1年間に急性膵炎で受療した患者を対象に全国疫学調査が行われた.この調査で個人調査票を収集し得た2256例のうち年齢を確認できた2216例を対象とした.65歳以上を高齢者とし,65歳以上75歳未満(前期高齢者),75歳以上85歳未満(後期高齢者),85歳以上(超高齢者)に分類し,成因,重症度(旧基準),合併症,予後について非高齢者と比較検討した.
【成績】急性膵炎症例の43.5%(男性例の35.9%,女性例の58.4%)が高齢者であった.高齢者急性膵炎の主な成因は,胆石性37.4%,特発性20.6%,アルコール性11.8%であり,非高齢者と比べて胆石性が多く,アルコール性が少なかった.高齢者急性膵炎の24.5%が重症であり,非高齢者より高頻度であった.高齢者急性膵炎全体の3.7%,重症例の13.6%に膵炎関連死を認め,非高齢者の約4倍の頻度であった.感染性合併症の頻度は非高齢者と同程度であったが,敗血症合併例の致命率は非高齢者より高かった.高齢者急性膵炎を成因別にみると,特発性では呼吸不全や腎不全の合併例が多く,膵炎関連死は6.4%に認められた.超高齢者の膵炎関連死は11.4%に達した.一方,アルコール性では膵炎関連死は前期高齢者の4.9%に認められたが,後期高齢者,超高齢者では認められなかった.胆石性の1.7%に膵炎関連死を認めたが年齢区分による差は明らかでなかった.
【結論】高齢者急性膵炎は非高齢症例と成因が異なり予後がより不良であった.特に特発性では呼吸不全や腎不全,膵炎関連死が多く,年齢を考慮した,より慎重な対応が必要と考えられた.
索引用語