セッション情報 パネルディスカッション3-2

高齢者消化器疾患の現状と対策:肝胆膵

タイトル PD3-2-11:

高齢者の慢性膵炎と自己免疫性膵炎の特徴

演者 千葉 和朗(がん・感染症センター都立駒込病院消化器内科)
共同演者 神澤 輝実(がん・感染症センター都立駒込病院消化器内科), 田畑 拓久(がん・感染症センター都立駒込病院消化器内科)
抄録 【目的】高齢者の慢性膵炎・自己免疫性膵炎の特徴を明らかにする.【方法】慢性膵炎212例(平均54.5歳)と自己免疫性膵炎74例(64.2歳)を対象とし,診断時の年齢で高齢者群(65歳以上)と非高齢者群(65歳未満)に分け臨床像を比較検討した.【結果】1.慢性膵炎:高齢者63例と非高齢者149例で,高齢者では女性の比率が高く(男女比:高齢者1:0.31 vs.非高齢者1:0.08,p<0.05),成因はアルコール性が少なく(アルコール性:46% vs. 91%,p<0.01),特発性が多かった(特発性:35% vs. 7%,p<0.01).腹痛の頻度は高齢者(22%)と非高齢者(64%)で,高齢者で無痛性が多かった(p<0.01).黄疸(3% vs. 9%),膵石(55% vs. 59%),糖尿病(46% vs. 55%),外分泌機能不全(6% vs. 7%)の頻度に差を認めなかった.慢性膵炎に対しての外科手術の頻度は高齢者(6%)で非高齢者(24%)より低かった(p<0.05).悪性腫瘍は高齢者23例(36%)に31病変,非高齢者23例(15%)に29病変が合併し,胃癌・食道癌・大腸癌・肺癌などに対しては内視鏡治療や外科切除が多く施行された.膵臓癌は高齢者6例,非高齢者3例に合併しすべて癌死した.経過中に高齢者19例,非高齢者35例が死亡し,死因は悪性腫瘍が最多であったが,高齢者では脳血管障害や栄養不良での死亡が多かった.2.自己免疫性膵炎:高齢者44例(男女比1:0.33)と非高齢者30例(1:0.42)で,高齢の男性に多くみられた.糖尿病の合併は高齢者に有意に多く(54% vs. 23%,p<0.01),黄疸(57% vs. 50%),血清IgG4値(473.7 mg/dl vs. 368.8 mg/dl),膵びまん性腫大(30% vs. 26%),膵外病変(52% vs. 30%)では差はなかった.高齢者群7例で膵癌との鑑別が困難で膵切除が行われた.【結語】高齢者の慢性膵炎は女性の比率が高くなり,特発性と無痛性が多かった.高齢者の慢性膵炎の診療では,悪性腫瘍の合併に留意する必要がある.自己免疫性膵炎は高齢者に多く,膵腫瘤を認めた際には,膵臓癌に加え自己免疫性膵炎も念頭に置くべきである.
索引用語