セッション情報 パネルディスカッション3-2

高齢者消化器疾患の現状と対策:肝胆膵

タイトル PD3-2-12:

高齢者膵嚢胞性疾患患者の自然史を考慮した経過観察方法

演者 大野 栄三郎(名古屋大学医学部附属病院光学医療診療部)
共同演者 廣岡 芳樹(名古屋大学医学部附属病院光学医療診療部), 後藤 秀実(名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科学)
抄録 【目的】高齢者に頻度の高い膵嚢胞性疾患,特に膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)の自然史の検討.【対象】2001年以降,造影EUSにて診断したIPMN388例中,12か月以上の経過観察が可能であった231例.男性:女性=130:101例(観察期間中央値46.1か月).診断時平均年齢64.7歳(最終平均年齢69.3歳).経過観察はEUSを中心にCT/MRI/USを組み合わせ基本的に年1-2回の画像診断にて行った.IPMN自体の悪性化は切除病理組織診断による悪性例又は膵病変の切除不能状態への進展と定義した.【検討項目】1)IPMN症例の診断時年齢2)診断時年代による悪性化率の比較3)経過観察中死亡症例の検討.80歳以上の症例の臨床経過.4)IPMN悪性化危険因子【結果】1)診断時年齢50歳未満:50代:60代:70代:80歳以上=14:53:87:65:11と60歳以上の高齢者が70.5%を占めた.2)経過観察中に24例の悪性化を認めた(IPMN自体の悪性化16例,通常型膵癌合併8例)診断時年齢70歳未満:70歳以上における5年悪性化率は7.8%:11.0%であり有意差は認めなかった(Logrank p=0.7332).3)経過観察中16例の死亡例を認め(平均年齢75.1歳),12例は他病死(他臓器癌6例)で4例はIPMN癌化又は通常型膵癌合併が死因であった.80歳以上の外科的切除症例は7例(IPMA2例,IPMC4例,膵癌合併1例)認め,周術期死亡は認めなかった.一方でIPMNの悪性化症例で年齢又は社会的事由にて経過観察中の症例は7例認めた.4)悪性化予測因子の検討では症状出現例,EUS又は造影CTにて明らかな壁在結節を認める症例,主膵管径の増大例が有意な因子であった.【結語】膵IPMNは高齢者に多く,IPMN自体の悪性化,通常型膵癌の合併のriskを有することを念頭に置き,高齢者でも手術治療を希望する患者に対してはEUS/造影CTによる積極的経過観察が望ましい.
索引用語