セッション情報 パネルディスカッション4

遺伝子多型解析と消化器疾患

タイトル PD4-1:

クローン病においてCRP値に影響を与える遺伝子多型とその臨床的意義

演者 遠藤 克哉(東北大学消化器病態学分野)
共同演者 奈良 志博(東北大学消化器病態学分野), 木内 喜孝(東北大学高等教育開発推進センター)
抄録 【背景・目的】CRP(C-reactive protein)値は炎症性疾患の病勢マーカーとして頻用される.しかし,海外の報告では,CRP遺伝子多型はCRP値に影響を与えるとされ,本邦でも近年,CRP値に影響を与える遺伝子多型(IL-6遺伝子多型,CRP遺伝子多型,HNF1A遺伝子多型)がGWASにより同定された.炎症性腸疾患であるクローン病(CD)でも,遺伝子多型によりCRP値と病勢に乖離が生じる可能性がある.今回,CDにおける遺伝子多型とCRP値との関連を解析した.【方法】日本人CD約400名を対象に,5つのSNP(CRP遺伝子:rs1800947,rs1205,rs11265257,rs3093059,HNF1A遺伝子:rs7310409)のgenotypingを施行した.このうち,寛解導入治療開始前のCRP値とCDAI(Crohn’s disease activity index)が同時に得られた220名を対象に,CDAIが一定範囲内にある患者の平均CRP値を,各遺伝子多型のgenotype間で比較した.また,サブ解析として遺伝子多型と発症5年以内の手術率との関連も解析した.【結果】CDAI:150~300の患者群(n=175)で,rs1205とrs3093059の各々において,genotype間で平均CRP値に有意差が認められた(rs1205では,T allele非保持群で,rs3093059では,C allele保持群で平均CRP値が有意に高い).日本人GWASで同定されたrs3093059とrs7310409の組み合わせに注目すると,2 locusともにCRPを上昇させる対立遺伝子を一つでも有する場合には,有しない場合に比しCRP値・発症5年以内の手術率が有意に高かった.【考察】CDでは,遺伝子多型によりCRP値の上がりやすさに差があり,臨床経過(医師の検査・治療法選択も含め)にも影響する可能性がある.患者個別の遺伝子多型を考慮したCRP値の評価が必要と思われた.
索引用語