セッション情報 パネルディスカッション4

遺伝子多型解析と消化器疾患

タイトル PD4-2:

炎症性腸疾患患者におけるチオプリン高感受性遺伝子の検討

演者 伴 宏充(滋賀医科大学消化器内科)
共同演者 安藤 朗(滋賀医科大学大学院消化器免疫分野), 藤山 佳秀(滋賀医科大学消化器内科)
抄録 【目的】難治性炎症性腸疾患の寛解維持目的に免疫調節剤(AZA/6-MP)の投与機会が増えているが,日本人ではこの薬剤に対する感受性が高く欧米人に比べて少量の投与が推奨されている.しかし,日本人におけるチオプリン高感受性と関連した遺伝的背景因子は明らかにされていない.2008年に細胞膜に存在する薬物トランスポーターMRP4が,6-MP/6-TGNの細胞内から細胞外への能動輸送に係わり,MRP4 G2269Aにより6-MP/6-TGNの排出低下を起こし,6-TGN濃度の上昇から骨髄抑制をきたすと報告された.このSNPは日本人の20%程度に認められるが欧米人ではほとんど認められず,日本人のチオプリン高感受性との関連が示唆される.我々は日本人炎症性腸疾患患者におけるMRP4,TPMT,ITPase遺伝子多型の解析,および白血球数,6-TGN濃度との関連についての検討を行った.また,SNPの迅速診断を可能にする検査方法についても検討を行った.【方法】IBD患者140人の単核球よりDNAを採取し,TPMT,ITPase遺伝子多型はRFLP法で,MRP4遺伝子多型はdirect sequence法で解析を行った.また,赤血球内6-TGN濃度はHPLC法で測定した.また,同じ患者においてTaqMan法によるSNPの解析を行い,従来法との比較を行った.【成績】MRP4 G2269A単独変異は変異のない群に比べて白血球数は有意に少なく6-TGN濃度は有意に高値であった.ITPase C94A単独変異は変異のない群に比べて白血球数は有意に多い傾向であり6-TGN濃度は有意に低値であった.MRP4とITPaseの重複変異では変異のない群と比べて白血球数,6-TGN濃度に差がなかった.TaqMan法によるSNPの結果は,従来法と差がなく検査時間は大幅に短縮された.【結論】日本人のチオプリン高感受性はMRP4 G2269Aと関連し,ITPase C94AがMRP4 G2269Aのチオプリン高感受性を低下させている可能性が示唆された.またTaqMan法での迅速診断により,外来においてもSNPの結果からAZA/6-MPの初期投与量などを設定し安全な治療を行うことができる可能性が示唆された.
索引用語