セッション情報 |
パネルディスカッション4
遺伝子多型解析と消化器疾患
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タイトル |
PD4-3:Allele解析をもとにしたSLC38A9の遺伝子多型と炎症性腸疾患の治療におけるazathioprineの薬物代謝に関する検討
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演者 |
内山 和彦(京都府立医科大学消化器内科) |
共同演者 |
高木 智久(京都府立医科大学消化器内科), 内藤 裕二(京都府立医科大学消化器内科) |
抄録 |
【目的】近年,炎症性腸疾患の治療において,免疫調節剤による病勢コントロールは非常に重要な役割を担っている.しかし,その有効性と安全性には薬剤代謝酵素の遺伝子発現による個人差があるのも事実である.今回,当院におけるazathioprineの使用経験,およびその代謝産物である血中6-TGN濃度測定結果を元に,azathioprineの有用性と安全性を検討した.【方法】現在当院に通院加療中の潰瘍性大腸炎患者191名,およびクローン病患者47名を対象とした.薬剤応答遺伝子発現の解析としてHapMap由来ヒトリンパ球細胞(HapMap細胞)を用いてazathioprineと5-ASA併用時のmRNA遺伝子発現の変化をGeneChipにて網羅的に解析し,薬物応答性に関連する遺伝子を絞り込んだ.さらにこのHapMap細胞およびIBD患者から採取した血液によるEG(エクスプレス・ジェノタイピング)法でのallele毎に遺伝子発現解析が進行中である.【結果】今回の対象患者の内で,重篤な副作用を示した患者はいなかった.また,潰瘍性大腸炎では検討期間中に3名,クローン病では2名の再燃を認めた.5-ASA製剤の投与量,平均赤血球容積(MCV),末梢白血球数と血中6-TGN値との間に有意な相関は認めなかった.HapMap細胞は低濃度5-ASAとazathioprine併用では148個の,高濃度5-ASAとazathioprine併用では515個の遺伝子発現の変化を認めた.またEG法を用いたallele毎に遺伝子発現解析では,SLC38A9の遺伝子多型が血中6-TGN濃度に相関した.【考察】今回の検討では,azathioprine投与量と6-TGN値の間に相関を認めず,SLC38A9の遺伝子多型が6-TGNの血中濃度に影響を及ぼしていることがわかった.薬物代謝酵素のSNPによる遺伝子発現の差異だけではなく,allele毎の遺伝子発現を解析することで,SLC38A9がazathioprineの薬剤代謝における新たな遺伝子マーカーであることが示唆される結果であった. |
索引用語 |
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