セッション情報 パネルディスカッション4

遺伝子多型解析と消化器疾患

タイトル PD4-4:

機能性ディスペプシアと遺伝子多型

演者 有沢 富康(金沢医科大学消化器内科学)
共同演者 田原 智光(藤田保健衛生大学消化管内科学), 中村 正克(金沢医科大学消化器内科学)
抄録 【はじめに】機能性ディスペプシア(FD)は,人口の15~20%が有しているcommon diseaseであり,また発症の要因が非常に多岐にわたるためgenome-wideな研究には不向きと考えられる.それゆえ,我々はこれまでCandidateとなりうる多くの遺伝子多型のFDに対する関与につき検討してきた.そこから見えてくるFD像につき報告する.【対象】FD患者約250~350例,非FD者約200~400例を対象とした.全例に内視鏡をはじめとする画像検査,血液検査を施行し,器質的疾患を除外し,また同時にH. pylori(HP)感染の有無に関しても確認した.侵害受容・刺激伝達系としてGNB-3,TRPV1,SLC6A4,SCN10Aなど,運動系としてHT-2AR,炎症・免疫関連分子としてMIF,IL-17Aなど,胃の恒常性に関与する分子としてCOX-1,HRH2など25以上のSNPをタイピングし,Logistic多変量解析でその関与を検討した.【結果】FD全体ではTRPV1のrs222747(315G/C),SERTコードするSLC6A4の3’-UTRをtargetとするpri-miR325のrs5938804 T/C・rs5981521 C/Tのhaplotype,内蔵知覚の伝達に関与するNaチャンネルNaV1.8をコードするSCN10Aのrs57326399(2884A/G)・rs6795970(3218 T/C)・rs12632942(3275T/C)のhaplotypeの関与が認められた.またEPS,PDS対しては,この3者は同様かつ同程度の強度での関与が認められた.一方,HP感染者に限った検討では多くの炎症・免疫関連分子の炎症惹起性多型や炎症での閾値低下が確認されているTRPV1の多型の関与が認められ,HP非感染者に限れば,GNB-3,pre-miR325,SCN10Aの多型など,刺激伝達・侵害受容関連の多型の関与が認められた.【結語】機能性ディスペプシアでは中枢への刺激伝導系が関与し,EPSとPDSでは同様の背景が存在すると考えられた.一方,HP感染下のディスペプシアには末梢レベルでの炎症に基づく刺激受容の撹乱が存在すると考えられた.
索引用語