セッション情報 パネルディスカッション4

遺伝子多型解析と消化器疾患

タイトル PD4-5:

網羅的SNP解析による低用量アスピリン内服患者の小腸出血関連SNPsの検討

演者 村尾 高久(川崎医科大学消化管内科学)
共同演者 塩谷 昭子(川崎医科大学消化管内科学), 春間 賢(川崎医科大学消化管内科学)
抄録 【目的】低用量腸溶剤アスピリン(LDA)による小腸出血関連因子を同定する目的で,長期LDA内服患者を対象に,網羅的SNP解析結果に基づき症例対象研究を行った.【対象および方法】貧血あるいは出血を伴いカプセル内視鏡で小腸粘膜傷害を来したLDA内服17例と出血リスク因子および性別・年齢をマッチさせたLDA内服対照群18例の血液よりDNAを抽出した.薬物代謝・トランスポーター遺伝子解析用マイクロアレイ(DMET plus)を使用し,網羅的SNP解析を行った.小腸出血との有意な関連性が得られたSNPsについてPCR-RFLP法あるいはTaqMan SNP Genotyping Assayキットを用い,ダイレクトシークエンス法で確認し,2群間で比較検討した.【成績】対象は,LDA内服小腸出血群30例と対照群430例.アレイ解析で,特定した27 SNPsの内,臨床的に関連性が疑われる7つのSNPs CYP2B6*27 15708T>C(M198T),CYP2B6*6 15631G>T(Q172H),SLC10A2 c.*315G>T,SLC10A2 c.511G>T(A171S),SLC10A2 c.511G>T(A171S),CYP4F11 4927T>C(I106I),CYP4F11 20043G>A(D446N)について検討した.CYP4F11の2つのSNPは完全連鎖し,CYP4F11 20043GGの率は,小腸出血群で対照群と比較して有意に高率であった(73.3% vs 43.6% p=0.002).他の検討したSNPsには有意な関連性を認めなかった.併用薬剤の検討では,NSAIDs,ワーファリン内服例が出血群で有意に高率であったが,PPI併用率は両群間でほぼ同率であった.多変量解析の結果,脳血管障害の基礎疾患(Odds ratio 4.22,95% C.I. 1.77-10.1),NSAIDs(6.77,95% C.I. 20.1-22.4)とともにCYP4F11 20043GG(3.35,95% C.I. 1.41-7.80)はLDA小腸出血の危険因子であった.【結論】CYP4F11 SNPはLDAによる小腸出血予測のマーカーとなる可能性が示唆された.
索引用語