セッション情報 パネルディスカッション4

遺伝子多型解析と消化器疾患

タイトル PD4-7:

次世代シークエンサーを用いた全エクソーム解析による膵炎関連遺伝子の検討

演者 粂 潔(東北大学消化器内科)
共同演者 正宗 淳(東北大学消化器内科), 下瀬川 徹(東北大学消化器内科)
抄録 【目的】膵炎に関連する遺伝子変異として,これまでトリプシンとその阻害蛋白に焦点が当てられいくつかの遺伝子異常が報告されているが,病態の全容はいまだ解明されていない.次世代シークエンサーは,従来のキャピラリーシークエンサー数百台分のデータ生産量を1台で賄えるとされる.蛋白質を符号化しているmRNAの翻訳領域,すなわちエクソーム領域の総和は約32Mbであり,ゲノムの1.5%を占める.エクソーム領域の異常により遺伝病の85%以上を説明できるとされ,次世代シークエンサーによりこれを網羅的に解析することにより,いくつかの疾患遺伝子が解明されつつある.本研究では,次世代シークエンサーを用いた全エクソーム解析により,膵炎に関連する遺伝子異常を同定することを目的とする.【方法】既知の遺伝子異常を認めない遺伝性もしくは家族性膵炎の3家系7症例を対象とした.解析にはillumina社のHiseq2000を使用した.【成績】リード長101bpのpaired-end readsにより解読し,総リード数12.3億リード,1症例あたり平均1.7億リードを読み取った.ターゲット領域の平均depthは109~214と良好であった.各症例のエクソン領域にそれぞれ約25,000個のvariantを認め,そのうちdbSNP135と1000ゲノムプロジェクトで同定されていない新規の異常は,各例それぞれ約1,100個前後であった.このうち非同義置換変異で,かつ各家系で共通している遺伝子を候補として検出したところ,最近注目されている膵消化酵素の遺伝子異常が同定された.【結論】次世代シークエンサーを用いた全エクソーム領域の解析は,新規疾患遺伝子同定の有力なツールとなりうると考えられた.なお本研究は当院遺伝病学分野ならびに細胞増殖制御分野との共同研究として行った.
索引用語