セッション情報 パネルディスカッション4

遺伝子多型解析と消化器疾患

タイトル PD4-8:

IL28B遺伝子一塩基多型はHCV高感染地区におけるHCV感染者の自然排除とコア抗原量に関連する

演者 小田 耕平(鹿児島大学消化器疾患生活習慣病学)
共同演者 宇都 浩文(鹿児島大学消化器疾患生活習慣病学), 坪内 博仁(鹿児島大学消化器疾患生活習慣病学)
抄録 【目的】IL28B遺伝子の一塩基多型(SNP)はC型慢性肝炎患者に対するIFN治療効果に関連しているだけでなく,HCVの急性感染後の自然排除にも関連することが報告されている.しかし,IL28BのSNPが日本のHCV高感染地区におけるHCV感染者の自然経過にどのように影響するかは,十分明らかにされていない.今回,IL28B SNPのHCV自然排除,生化学検査値及び予後に与える影響について検討した.
【方法】HCV高感染地区において1993年から2005年までコホート研究を行い,1321名のHCV抗体陽性者を確認した(約20%の抗体陽性率).本研究では,これらの住民のうち,2001年に腹部超音波検査などを施行し,SNP解析を同意した531名を対象とした(持続感染者379名,既感染者152名).これらの患者の経過および生化学検査値とIL28B SNP(rs8099917)の関連を検討した.
【成績】HCV既感染者のうちメジャーアリル(TT)は140名(92.1%),持続感染者は299名(78.9%)で,有意に既感染者でTTの頻度が高かった.さらに,2001年に既感染者と判断した対象者のうち1995年にHCV RNAが陽性であった10名のIL28BはすべてTTであった.一方,HCV持続感染者では2001年に測定したHCVコア抗原量はTTの方がnon-TTより有意に高値であった.また,HCV持続感染者における血小板数,ALT,肝線維化マーカー,腫瘍マーカーなどの生化学検査値とIL28B SNPに関連はなかった.さらに,IL28B SNPはフィブロスキャンによる肝線維化の程度や,2005年までの肝発癌・肝疾患関連死に影響しなかった.
【結論】IL28B SNPはHCVの自然排除およびコア抗原量に関連すると考えられた.一方,IL28B SNPは肝線維化や肝発癌などの病態とは関連しない可能性が示唆された.
索引用語