セッション情報 パネルディスカッション4

遺伝子多型解析と消化器疾患

タイトル PD4-11:

高齢女性C型慢性肝疾患における肝病態促進に関与する遺伝子多型解析とその有効性

演者 是永 匡紹(国立国際医療研究センター肝炎・免疫研究センター)
共同演者 杉山 昌也(国立国際医療研究センター肝炎・免疫研究センター), 溝上 雅史(国立国際医療研究センター肝炎・免疫研究センター)
抄録 【目的】C型慢性肝疾患に対するIFN感受性を決定するIL28Bの遺伝子多型(SNPs)が発見されIFN治療予測因子として広く診療に用いられている.一方,肝線維化・肝発がんに関与するSNPsも複数,報告されているが,その臨床的な有効性は明らかではない.今回われわれは,肝病態促進に関与する環境因子を除くことで,既報のSNPsが肝線維化進行・発がんを予測しウイルス排除適応者を絞り込めるか否か明らかにする目的で,高齢女性を対象に以下の検討を行った.【方法】2009.10~2012.8の期間に,SNPs測定に同意が得られ解析可能であったC型慢性肝疾患375例中,IFN治療・飲酒・糖尿病治療歴を認めない70歳以上女性75症例を対象に,慢性肝炎(CH群)40例と肝硬変and/or肝細胞癌(LC/HCC群)35例の,線維化・脂肪化に関与するrs738409,癌化に関与するrs2596542,rs1012068及び酸化ストレスに関与するrs4800を測定し解析を行った.HCC群は発症時のdataと年齢を,LCの診断には肝生検とVTTQ(1.8m/s以上)を使用した.【成績】平均年齢はCH群,LC/HCC群ともに77歳.CH群ではLC/HCC群に比べAlb(4.2vs3.8g/dL),PLT(16vs11万)が有意に高く(5.7vs68ng/dL)が有意に低かった.risk alleyであるrs738409minor homo typeの割合はCH群で低い傾向を認めたが(21%vs38%),rs2596542minor homo type(12%vs0%),rs1012068non-major type(50%vs38%),rs4800non-major type(29%vs33%)とCH群とLC/HCC群間に有意な差を認めなかった.この現象は75,80歳以上で解析を行っても同様であり,risk alley複数もつ割合にも差を認めなかった.【結論】年齢,性別,肝発癌促進因子をできるだけ除外しても,肝発癌を認めない高齢女性の多くに肝病態促進SNPsを有する症例が存在する.現状のSNPsを組み合わせても肝線維化・肝発がんを予測することは困難である可能性が高いと推測され,更なる症例の追加・解析を加え報告する.
索引用語