セッション情報 パネルディスカッション4

遺伝子多型解析と消化器疾患

タイトル PD4-13:

DEPDC5遺伝子多型のHCV感染に起因する肝癌発症リスクの評価

演者 越智 秀典(広島大学消化器・代謝内科DELIMITER理化学研究所横浜研究所ゲノム医科学研究センター)
共同演者 今村 道雄(広島大学消化器・代謝内科), 茶山 一彰(広島大学消化器・代謝内科DELIMITER理化学研究所横浜研究所ゲノム医科学研究センター)
抄録 【目的】近年ゲノムワイド関連解析(GWAS)によって各種消化器疾患の病態と関連する候補遺伝子・SNPが報告されてきている.我々もGWASを用いてHCV感染に起因する肝癌の発症に関連する遺伝子多型としてDEPDC5遺伝子多型を同定報告した(Nat Genet 2011).今回我々は肝癌発症リスクについてDEPDC5及び種々の因子を比較検討した.【方法】(1)C型慢性肝炎(HC)症例4557例(発癌例1010例,非発癌例3457例)についてDEPDC5遺伝子多型,宿主側因子,ウィルス側因子と発癌の関連性を解析した.(2)インターフェロンをベースとした治療後に発癌の有無を経過観察しえたC型慢性肝炎症例2752例(著効例1754例(発癌133例,非発癌例1621例),非著効998例(発癌64例,非発癌例934例))について肝癌発症のリスク要因を検討した.【成績】(1)発癌に対するDEPDC5遺伝子型の影響は層別解析ではHCVサブタイプ間(1b/非1b)では差を認めず,男性,高年齢(65歳以上),血小板数低下(<10万)で増強する傾向を認めた.DEPDC5と性別,飲酒歴,糖尿病,血小板数等の肝癌発症リスク要因との間には有意な関連性は認めなかった.多変量解析ではDEPDC5遺伝子型(p=3.9E-5),男性,年齢,血小板数,飲酒歴,糖尿病が肝癌発症と関連する有意な因子であった.HCV1b型においてHCVコア領域アミノ酸変異(aa70)とDEPDC5遺伝子型は独立して発癌と関連していた(p=0.040,p=0.0023).(2)非著効例ではDEPDC5遺伝子型間に発癌率の有意な差を認めた(p=0.0046)が著効例では差を認めなかった(p=0.72).さらに非著効例を性別で層別化すると男性では有意であったが(p=0.0046),女性では有意でなかった(p=0.29).【結論】HCV感染に起因する肝癌発症に対するDEPDC5遺伝子多型のリスクは男性で高く,年齢や慢性肝炎の進展に伴い上昇傾向を認める一方で,ウィルス駆除によってそのリスクは減弱するものと考えられた.
索引用語