セッション情報 パネルディスカッション4

遺伝子多型解析と消化器疾患

タイトル PD4-14:

エストロゲン受容体α遺伝子(ESR1)のSNPsはNAFLD病態進展に関与する

演者 小川 祐二(横浜市立大学消化器内科)
共同演者 斉藤 聡(横浜市立大学消化器内科), 米田 正人(横浜市立大学消化器内科)
抄録 【目的】非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)は性差及び女性の閉経前後で発症率に差を認めることが知られており,エストロゲン作用が関わると考えられる.NASH発症には肝内の炎症が深く関与することが知られているが,エストロゲンもまた全身の炎症と関連があるとされている.我々はこれまでの報告で,肥満に伴う脂肪肝ではレプチンの影響によりクッパー細胞のCD14を活性化することで低用量LPSへの反応性を亢進し,肝内の炎症を強く惹起することを報告してきた.しかし,肥満者の脂肪肝では全て炎症が起こるわけではないことを考慮すると,ホスト側において炎症への反応性を規定する因子がある可能性が考えられた.本研究の目的は,NAFLD患者でのエストロゲン受容体α遺伝子(ESR1)のSNPsと組織学的所見の比較を行い,その関係性について検討することである.【方法】肝生検を行ったNAFLD患者115症例(単純性脂肪肝50例,NASH55症例),正常対照群781症例から血液を採取した.エストロゲン受容体遺伝子全長(>300kb)にわたり6~38 kb間隔に存在し,マイナーアレル頻度15%以上のSNPs20個を選択し検討した.【成績】エストロゲンのSNPs a3798759及びa3798758はコントロールとNAFLDで差を認めた.simple steatosisに比しNASHではSNP rs3798565,rs3778082,rs3798573,rs3778089,rs750686,rs3020381,rs2474148の計7箇所で有意差を認め,さらにこれらにうち以下の2箇所で肝内炎症と有意な相関を認めた.rs750686(p=0.0065,odds ration=2.47),rs2474148(p=0.0088,odds ration=2.39).【結論】エストロゲン受容体ノックアウトマウスでは顕著なNASHへと至ることからも,エストロゲン受容体がNASH発症に関与する可能性は高いと考えられる.本検討により,ESR1のSNPs,特にrs750686及びrs2474148はNAFLDにおいてエストロゲンに対する受容体の作用が異なることが予想され,それにより肝臓での炎症に対する反応性を規定することでNASHへの進展に関与する可能性が示唆された.
索引用語