セッション情報 パネルディスカッション5

PPI抵抗性胃食道逆流症の現状と治療戦略

タイトル PD5-9:

Symptom Index(SI)陽性PPI抵抗性NERDに対するニザチジン併用の有用性

演者 山下 博司(大阪府済生会中津病院消化器内科)
共同演者 川口 真平(大阪府済生会中津病院消化器内科), 蘆田 潔(大阪府済生会中津病院消化器内科)
抄録 【目的】NERDにおける常用量PPIの有効率は約50%に留まる.さらに常用量PPI治療抵抗例に倍量投与を行っても有効率は約50%である.すなわちNERDでは倍量PPI投与でも症状の改善が得られない患者が多く存在する.逆流と症状の相関がある場合(SI陽性),逆流自体を抑制することは有効である.NERDでの逆流は一過性LES弛緩(transient lower esophageal sphincter relaxation:TLESR)時に伴うものが大半で,ニザチジンはTLESRを減少させることが報告されている.SI陽性PPI抵抗性NERDにおけるニザチジン併用の有効性を検討した.【方法】2010年7月から2012年4月までにラベプラゾール10mg1日2回投与にも症状が残存する42例(男性27例,平均年齢60.5歳)に対して多チャンネル食道インピーダンス-pHモニタリング(MII-pH),食道内圧測定を行った.液体逆流と液体と気体の混合逆流を評価の対象にした.ガスのみの逆流は除外した.逆流物の酸性度はpHが4未満の逆流を酸,pH4未満にならない逆流を非酸とした.症候性逆流回数を総症状回数で割ったものをsymptom index(SI)とし,SI50%以上をSI陽性とした.SI陽性であった22例のうち同意の得られた5例(全例男性,平均年齢50.8歳)にニザチジンを併用(150mg1日2回)し,8週間後にFSSG問診票,MII-pH測定,食道内圧測定を行った.【結果】ニザチジン併用前と比較して併用後でFSSGスコア(28.2±10.1vs19.2±9.0 p<0.01)と総逆流回数(67.2±35.7vs33.6±19.5 p<0.01)ともに有意に減少した.逆流内容については酸性度別の逆流頻度と性状別の逆流頻度ともに併用前後で差を認めなかった.逆流の上昇度においては,上部食道逆流回数が併用後で有意に減少した(26.8±11.8vs14.2±9.5 p<0.01)が,下部食道逆流回数に差は認めなかった.LES静止圧,食道体部蠕動圧においては併用前後で有意差は認めなかった.【結語】SI陽性PPI抵抗性NERDにおいてニザチジン併用は上部食道への逆流回数を減少させることで症状を改善させる可能性が示唆された.
索引用語