セッション情報 パネルディスカッション5

PPI抵抗性胃食道逆流症の現状と治療戦略

タイトル PD5-10:

PPI抵抗性NERDの病態と六君子湯による治療効果

演者 尾高 健夫(千葉大学光学医療診療部)
共同演者 松村 倫明(千葉大学光学医療診療部), 横須賀 收(千葉大学消化器内科)
抄録 【目的】NERD症例の食道・LES機能と自覚症状を検討し,PPI-Refractory NERDとPPI-Effective NERDの病態の差異を明らかにすること.また,NERD症例に対する六君子湯の効果を明らかにすること.
【方法】NERD 46例の食道・LES機能と自覚症状を評価.また,研究参加同意を得られた28例で六君子湯の効果を評価.
全ての消化器薬を1週間以上休薬とし,食道内圧・インピーダンス同時測定検査を施行.六君子湯7.5g/日を8週間単独投与した後,再び同検査を施行.投与前後の食道・LES機能の変化を検討した.自覚症状は,投与前後の日本語版GSRSスコアの変化を検討した.
【結果】NERD 46例中,PPI-Refractory NERD(以下,R群)が27例,PPI-Effective NERD(以下,E群)が19例であった.全ての消化器薬を休薬した状態での評価では,一次蠕動出現率(正常:>70%)はR群57.4±29.3%,E群82.1±23.5%と,R群で有意に低値であった.また同様に,食道クリアランスの指標であるcomplete bolus transit率(正常:>70%)はR群50.7±27.6%,E群74.2%±21.4%と,R群で有意に低値であった.静止時LES圧,嚥下時LES残存圧,遠位食道収縮圧は,両群に有意差を認めなかった.自覚症状は,消化不良スコアがR群で有意に高値であったが,他のスコアに有意差はなかった.
六君子湯投与前後の変化は,NERD全体の評価で,嚥下時LES残存圧(正常:<8mmHg)が7.5±4.2から4.9±3.4mmHgと有意に低下し,complete bolus transit率も60.0±22.9%から79.3±17.4%と有意な改善を認めた.R群とE群での比較では,どちらの群も嚥下時LES残存圧,complete bolus transit率,酸逆流スコアと腹痛スコアの改善を認めたが,R群でのみ一次蠕動出現率と消化不良スコアの改善を認めた.
【結論】PPI-Refractory NERDではPPI-Effective NERDと比べ,食道蠕動障害や食道クリアランス低下をより強く認めた.六君子湯はNERDの食道クリアランスを改善し,症状軽減に有効であった.
索引用語