セッション情報 パネルディスカッション6

小腸病変の診断と治療の進歩

タイトル PD6-1:

NSAIDs起因性小腸傷害を活性酸素産生の観点から可視化する

演者 金子 剛(筑波大学消化器内科)
共同演者 松井 裕史(筑波大学消化器内科), 溝上 裕士(筑波大学消化器内科)
抄録 【目的】本研究の目的はNSAIDs起因性小腸傷害のメカニズムを解明することである.本研究ではA)同傷害を経時的に捕捉するために,マウス小腸粘膜をリアルタイム観察可能な実験系を構築する.B)同傷害の機序を培養細胞系にて検討,その予防・治療法を提案する.【方法】A)ICRマウスを麻酔下に開腹し,indomethacinを投与前後において小腸粘膜をリアルタイムに観察する.この際白色光の観察のみならず,i)粘膜上の死細胞・ii)細胞内活性酸素濃度を各々propidium iodide(PI),hydroxyphenyl fluorescein(HPF)にて染色後,各々に至適な波長にて蛍光観察する.B)小腸粘膜培養系IEC6細胞におけるindomethacin起因性細胞傷害をi)死細胞ii)細胞膜脂質過酸化量の観点から経時的に観察する.また脂質過酸化原因となる活性酸素種の同定をiii)電子スピン共鳴法にて施行する.【結果】A)indomethacin投与前後の小腸粘膜傷害は白色光では判別しえなかった相違点を,細胞内活性酸素濃度・脂質過酸化量をターゲットとした蛍光観察では判別可能であった.B)NSAIDs投与は濃度依存的・時間依存的細胞死を誘発した.また,細胞膜脂質過酸化を濃度依存的に惹起した.この原因となる活性酸素種は電子スピン共鳴法にてミトコンドリア由来のスーパーオキシドであった.【結語】NSAIDs起因性小腸傷害機序においては,細胞内活性酸素濃度上昇,細胞膜脂質過酸化がびらん・潰瘍といった明らかな粘膜傷害より早期に惹起されることが分かった.この原因となる活性酸素種は電子スピン共鳴法によりミトコンドリア由来のスーパーオキシドであることが分かった.これら一連の変化は白色光では捕捉不可能であったが,活性酸素・脂質過酸化を標的とした蛍光観察にてリアルタイム観察が可能であった.こうした蛍光観察手法はこれまでに捕えきれなかったNSAIDs起因性小腸傷害の発生機序解明に有用であると考えられた.同時に同傷害機序の端緒となる活性酸素種をスカベンジするといった治療が今後検討されるべきと考えた.
索引用語