セッション情報 パネルディスカッション6

小腸病変の診断と治療の進歩

タイトル PD6-2:

NSAIDs惹起性小腸潰瘍に対するToll-like receptor 2を介した治療法の検討

演者 成松 和幸(防衛医科大学校内科2)
共同演者 穂苅 量太(防衛医科大学校内科2), 三浦 総一郎(防衛医科大学校内科2)
抄録 背景:非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は一般診療で汎用される薬剤であり,その使用頻度は高い.また,副作用のひとつである腸管粘膜障害,特に小腸潰瘍に関してはカプセル内視鏡やダブルバルーン小腸鏡の普及でその頻度は比較的多いことが報告されているが,その治療については効果のある薬剤がいくつか報告されているものの十分でないのが現状である.NSAIDsが小腸粘膜障害を起こす機序として,プロスタグランジンの産生低下による粘液低下や胆汁酸による粘膜透過性の亢進,腸管の過活動,腸内細菌叢と単球や好中球の遊走能の亢進,TLR4を介した白血球の活性化などが報告されている.我々は以前白血球の小腸の遊走能がTLR4を介したLPSトレランスにより調節されていることを報告した.TLRはそれぞれのligandはさまざまであるが下流のシグナルは共通する部分が多く,それを介したクロストレランスが明らかとなっている.そこで今回我々は,TLR2 agonistであるLAM(lipoarabinomannan)がNSAIDs惹起性小腸潰瘍を改善させうるか検討した.方法:8~12週齢のC57BL/6Jマウスに,インドメタシン(IND 10mg/kg)を腹腔内投与し小腸潰瘍を作製した.LAM投与群についてはIND投与前に0.5mg/kg腹腔内投与した.その後4日間体重変化を観察し,活動性の評価項目として潰瘍の面積,組織学的評価,MPO活性を測定した.さらに,TLRのシグナル評価のためIRAK-M,SOCS3,IkB-z,TNFαを測定した.また,生体顕微鏡を使い,小腸の微小血管において白血球‐血管内皮間の循環動態を観察し各グループにおいて変化を比べた.結果:LAM前投与によりIND惹起性の潰瘍面積は減少した.またその際,TNFαのmRNA発現低下を伴った.白血球の循環動態の観察ではLAM投与は小腸への白血球マイグレーションを抑制した.考察:TLR2の腹腔内への前投与によりIND潰瘍は改善し,その機序として白血球マイグレーションの調整が想定された.TLR2 ligandはNSAIDs惹起性小腸潰瘍の新たな治療法となる可能性が示唆された.
索引用語