セッション情報 パネルディスカッション6

小腸病変の診断と治療の進歩

タイトル PD6-3:

非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAIDs)起因性小腸粘膜傷害の病態と予防法の検討

演者 倉本 貴典(大阪医科大学第2内科)
共同演者 小嶋 融一(大阪医科大学第2内科), 樋口 和秀(大阪医科大学第2内科)
抄録 【目的】NSAIDsは胃のみならず小腸においても粘膜傷害を惹起することが知られているが,酸の関与のない小腸粘膜傷害の病態や傷害に対する予防法については未だ明らかでない点が多く,動物実験において酸分泌抑制薬はNSAIDs起因性小腸傷害を悪化させるとの報告もある.我々は,基礎研究にて有効性が証明された薬剤に関してボランティアを対象とした臨床試験を行った.
【方法】防御因子増強剤のgeranylgeranylacetone(GGA),irsogladine(IG),rebamipide(REB)を用いてボランティアを対象とした臨床試験を行った.diclofenacに対する効果の検討として,防御因子増強剤ではGGAとIG,酸分泌抑制剤ではomeprazole 10mg,20mgとlansoprazole 30mg及びfamotidine 20mgを比較した.また,長期試験としてdiclofenacを対象にIGとomeprazoleを6週,10週まで継続した.
aspirinに関しては,omeprazole,REB常用量(300mg),REB高用量(900mg)を比較し,2週間の投薬前後で胃カメラ,カプセル内視鏡,便中calprotectinを計測し,小腸粘膜傷害の予防効果と用量依存性に関して検討した.
【成績】(1)GGA,IGはfamotidine,omeprazole,lansoprazoleと比較して,diclofenacによる食道・胃粘膜傷害を同等に抑制した,小腸病変数及び便中calprotectinにおいては有意に抑制した.(2)diclofenacの6週,10週の長期投与では,6週ではadaptationによると推察される小腸傷害の一時的な改善を認めたが,10週ではそれ以上の改善は認めず,6~10週にIGを追加した群では10週での小腸傷害は有意に改善した.(3)aspirin投与による小腸病変数は,omeprazoleに比較してREB常用量,高用量ともに抑制する傾向にあった.また,aspirin投与による便中calprotectinの増加を,omeprazoleに比較してREBは用量依存性に有意に抑制した.
【結論】基礎研究にて小腸病変を抑制した防御因子増強剤が,ボランティアを対象とした臨床試験より小腸傷害を抑制できる可能性が示唆された.これらを参考に今後の対処法を考えたい.
索引用語