セッション情報 パネルディスカッション6

小腸病変の診断と治療の進歩

タイトル PD6-4:

小腸病変を有するクローン病の内視鏡スコアの検討~粘膜病変に主眼をおいて~

演者 馬場 重樹(滋賀医科大学消化器内科)
共同演者 辻川 知之(同総合内科学講座), 齋藤 康晴(同光学診療部)
抄録 【目的】クローン病の内視鏡スコアとしてCDEISやSES-CDが用いられているが,評価法が複雑で,大腸病変に重点があり小腸内視鏡検査が普及した現状にそぐわない.一方で,生物学的製剤の登場により粘膜治癒が重要視されている.今回,我々は術後再発の粘膜評価に用いられるRutgeerts’ Scoreを改変した粘膜評価法(Modified Rutgeerts’ Score:MRS)を用いてクローン病小腸病変の評価を行った.【方法】2006年1月より当院で小腸内視鏡検査を施行した166例のクローン病症例からSES-CDにて小腸スコア≧大腸スコアであった小腸優位の124例と大腸スコア≧小腸スコアであった大腸優位の56例を抽出し対象とした.粘膜病変をSES-CDとMRSにて評価し,同時期に得られた血液生化学データとCDAIとの比較を行った.【成績】全症例,小腸優位例,大腸優位例の3群においてSES-CDとMRSは良好な相関係数が得られたが,特に大腸優位例において強い相関が認められた(スピアマン順位相関係数ρ=0.755,0.726,0.864).SES-CDとCRPとの相関は検討した3群においてそれぞれρ=0.608,0.455,0.761であった.一方,MRSではρ=0.608,0.532,0.770であった.粘膜治癒をSES-CDで3以下,MRSで1以下と定義しROC解析を行った.検討した3群においてSES-CDによる粘膜治癒の予測因子はCRPでAUCがそれぞれ0.746,0.693,0.913,MRSでは0.828,0.772,0.969であった.【結論】内視鏡スコアとCRPとの相関は大腸優位例で強く認められた.また,SES-CDと比較するとMRSがCRPとの良好な相関が得られた.近年,便中カルプロテクチンと内視鏡スコアとの比較が報告されているが(D’ Haens G et al. Inflamm Bowl Dis 2012),SES-CDにlarge ulcerの有無を付記して記載する方法がとられており,粘膜病変を把握することの重要性が強調される結果となっている.現在,SES-CDとMRSにおける観察者間の診断一致性についても検討中である.
索引用語