セッション情報 パネルディスカッション6

小腸病変の診断と治療の進歩

タイトル PD6-5:

クローン病小腸病変の新規画像診断法の検討

演者 野口 篤志(大阪市立大学消化器内科学)
共同演者 森本 謙一(大阪市立大学消化器内科学), 渡辺 憲治(大阪市立大学消化器内科学)
抄録 【目的】小腸病変の診断において本邦で開発されたバルーン小腸内視鏡の寄与は大きかったが,クローン病(CD)においては癒着や狭窄で深部挿入困難な症例が存在する.高精度な画像診断を目的に各種新規診断法を検討した.【方法】CD患者に対し,シングルバルーン小腸内視鏡(SBE)併用福大筑紫式小腸X線造影チューブ(SBE-T),極細径下部消化管内視鏡(PCF-PQ260I),パテンシーカプセル(PPC)前検査による小腸用カプセル内視鏡(CE)の有用性を検討した.【結果】広範な活動性病変や多発狭窄について正確な画像診断をするためにSBE-Tを25例に用い,ダブルバルーン小腸内視鏡による選択的ガストログラフィン造影(DBE-G)と比較した.SBE-Tの造影距離は99.8±36.5cmで,DBE-G(43.7cm)に比べ有意に長かった(p<0.001).SBEで直接観察できなかった部位に描出された病変は,25例中狭窄15例(平均2.5個),潰瘍4例,潰瘍瘢痕7例,瘻孔1例であり,広範な多発小腸狭窄の個数・分布・形状を正確に評価し,内視鏡的バルーン拡張術や外科的手術の適応を決定する等,治療方針の決定に有用であった.回盲弁等に細径大腸内視鏡通過困難な狭窄を有するCD症例33例に対してPCF-PQ260Iを使用し,17例(51.5%)が回腸下部まで挿入可能で,うち8例(24.2%)が臨床的には寛解だったが内視鏡的に活動性で治療強化の根拠を得ることができた.CE滞留回避のためのPPCをCD26例に対して行い,開通性が証明された20例全例でCEが滞留せず施行可能であった.CEはCD患者の小腸病変の評価を低侵襲で広範囲に行うことが可能であり,その結果は臨床アウトカムに寄与した.しかし約20%の症例がPPC内服30時間後の判定時に判定保留となり,その課題を克服する検討やCDのCEによる確定診断に寄与する検討が進行中である.【結論】CD小腸病変の診断は,近年の小腸内視鏡の開発で大きく進歩したが,課題も残されている.新規画像診断法を症例の特徴に合わせて用いることは,生物学的製剤時代のCD診療に求められる適切な治療方針立案に根拠となる情報を提供し得る.
索引用語