セッション情報 パネルディスカッション6

小腸病変の診断と治療の進歩

タイトル PD6-9:

慢性腎不全患者における小腸病変の特徴とリスクファクターに関する検討

演者 江塚 明子(横浜労災病院消化器内科)
共同演者 河村 晴信(小田原市立病院), 永瀬 肇(横浜労災病院消化器内科)
抄録 【目的】慢性腎不全(CKD)患者において鉄欠乏性貧血および原因不明消化管出血(OGIB)はしばしば起こる合併症である.これまでは大量出血を来した症例を除き,保存的に経過を診ることが多かったが,これらの症状は繰り返すことが多く,時に治療に難渋する.カプセル内視鏡(CE)の普及に伴って,OGIBに対して積極的に小腸病変の検索が行われるようになってきたが,CKD患者における小腸病変に関する詳細な報告は少ない.本研究の目的はCKD患者における小腸病変の特徴とリスクファクターを明らかにし,積極的に小腸病変の検索を行うべき症例を選別することである.【方法】当院および関連施設においてCEを施行したOGIBを呈するCKD患者42例と年齢・性別を調整したコントロール患者132例に関して,小腸病変の有所見率を比較した.さらに,血管性病変と潰瘍性病変に対して,単変量および多変量解析を行い,小腸病変のリスクファクターを同定した.【成績】CKD患者ではコントロール患者と比し,小腸病変(64.2% vs 44.7%,P=0.04)および血管性病変(47.6% vs 20.5%,P<0.001)の有所見率が有意に高かった.一方,潰瘍性病変に関しては,両群間に有意差を認めなかった(33.3% vs 27.3%,P=0.45).また,透析患者と非透析患者の間には,小腸病変の有所見率に有意差を認めなかった(55.7% vs 45.2%,P=0.88).多変量解析の結果,CKD患者において,6か月以内の輸血歴(OR 5.66;95% CI 1.10-29.1,P=0.04)が血管性病変の,低用量アスピリンの内服歴(OR 6.00;95% CI 1.13-31.9,P=0.04)が潰瘍性病変の独立したリスクファクターとなることが明らかとなった.【結論】OGIBを呈するCKD患者において,6か月以内の輸血歴がある場合や低用量アスピリンを内服している場合には積極的に小腸病変を検索すべきと考えられた.
索引用語