セッション情報 パネルディスカッション6

小腸病変の診断と治療の進歩

タイトル PD6-10:

カプセル内視鏡検査による門脈圧亢進症性小腸症(PHE)所見と,臨床背景の検討

演者 加賀谷 尚史(金沢大学消化器内科学)
共同演者 北村 和哉(金沢大学消化器内科学), 金子 周一(金沢大学消化器内科学)
抄録 【目的】我々はこれまでに,肝硬変症に伴う小腸病変の検討を行い,対照群と比してLC群において,edema,erythema,telangiectasias,angioectasia like lesionsを有意に多く認めるが,食道胃静脈瘤の有無や肝予備能との相関についてはさらなる検討が必要であることを報告してきた(Gastroenterological endoscopy, 2011).その後にさらなる症例を集積したことから,PHEの有無によって肝疾患の臨床背景がどのように異なるのかを検討することとした.【方法】カプセル内視鏡(VCE)を導入した2007年7月から2012年8月までの期間に検査を施行した176症例のうち肝疾患を有する症例を対象とし,PHEを認める群と認めない群での,臨床背景について比較検討した.【結果】期間中の肝疾患症例に対するVCE検査は44例(男性28例,女性16例.平均年齢66.9歳)であった.検査目的は,OGIB 17例,貧血の精査16例,他11例であった.「De Palmaらの分類でのgrade 2」病変を認める症例を「PHEあり」とした時,PHEありは33例,なしは11例であった.両群間を比較すると,性別,Child-Pugh score,PT,plts,alb,t-bil,HCCの有無には有意差を認めなかったが,「あり群」は年齢がより若年で,F2以上の静脈瘤または静脈瘤治療歴を有する例,PHG合併例が有意に多く,検査時Hbがより低値であった.【結論】検査適応によるバイアスがlimitationとして挙げられるものの,PHEを有する症例は門脈圧亢進症がより高度な症例であるが,検査時の肝予備能との関連は認めなかった.今後直接的な門脈圧や,腹腔内循環との関連を検討することがより詳細な病態の解明につながると考えられた.
索引用語