セッション情報 パネルディスカッション6

小腸病変の診断と治療の進歩

タイトル PD6-12:

ダブルバルーン内視鏡による小腸癌の診断

演者 鈴木 将大(日本医科大学消化器内科学)
共同演者 三井 啓吾(日本医科大学消化器内科学), 坂本 長逸(日本医科大学消化器内科学)
抄録 【背景】小腸バルーン内視鏡(Balloon-assisted endoscopy:BAE)が,日常臨床で使用されて10年近くが経過し,小腸癌では,BAEによる術前組織診断も可能となったが,一方で,診断された時には進行癌であることも多く,現状でBAEを施行した小腸癌の予後に関しては不明な点も多い.
【目的】バルーン内視鏡が行われた小腸癌症例の診断経緯,他の画像診断,内視鏡所見,病理診断や生存期間を検討し,小腸癌診療におけるBAEの役割を明らかとする.
【対象・方法】2003年6月より当科でダブルバルーン内視鏡(Double balloon endoscopy:DBE)が施行し小腸癌と診断した16例の,患者背景,症状,内視鏡所見,治療,生存期間を検討した.
【結果】年齢は,57.9±14.8歳(32-83).性差は,男性:女性=10:6.検査動機は小腸出血疑いが8例,腸閉塞精査6例,画像診断で病変指摘が2例.事前の画像診断は,カプセル内視鏡,小腸造影(イレウス管造影を含む),X線CT,腹部超音波,MRI,Gaシンチが行われており,1例を除く15例で病変が指摘されていた.全例DBEで病変に到達することが可能であった.全例で生検を行い,13(81%)/16例で内視鏡的に組織学的診断が可能であった.病変部位は,空腸15例,術後再建後のVater乳頭1例.16例全てが,進行がんで診断されていた.高齢の1例でBSCが選択された以外は,治療は外科手術,外科手術+化学療法が行われた.BAEを施行した小腸癌の,生存期間中央値(median survival time:MST)は,880日(2.4年)であった.
【結論】小腸内視鏡で病変の描出し,組織生検による術前の確定診断は容易になったが,早期癌で診断された症例はなかった.BAEによっても,すでに進行している状態で診断されていることが明らかとなった.MSTもBAE以前の報告と大きな変化はなく,小腸癌の予後改善に向けて,早期診断と治療法のさらなる進歩が必要であると考えられた.
索引用語