セッション情報 パネルディスカッション6

小腸病変の診断と治療の進歩

タイトル PD6-13:

小腸濾胞性リンパ腫の至適治療:リツキシマブ治療を中心に

演者 中村 昌太郎(九州大学先端医療イノベーションセンター)
共同演者 松本 主之(九州大学病態機能内科学), 蔵原 晃一(松山赤十字病院胃腸センター)
抄録 【目的】小腸濾胞性リンパ腫(follicular lymphoma,FL)の治療方針を検討する.【方法】当施設で診断した消化管FLのうち,バルーン内視鏡またはカプセル内視鏡で小腸病変の有無を確認した50例(男23例,女27例;平均年齢60.7歳)を対象とした.全例でt(14;18)/IgH-BCL2転座を蛍光in situハイブリダイゼーションで検索し,臨床病理学的特徴を検討した.さらにprogression-free survival(PFS)に関連する因子をKaplan-Meier法で解析した.【結果】罹患部位は胃3例(6%),十二指腸39例(78%),空腸36例(73%),回腸27例(54%),大腸8例(16%)であり,38例(76%)で2か所以上の消化管領域に病変を認めた.肉眼型はMLP型が最も多く(80%),臨床病期はI期27例,II1期3例,II2期6例,IIE期3例,IV期11例であった.組織は43例(86%)がgrade 1-2で,46例(92%)でt(14;18)陽性であった.初回治療として,抗菌薬投与を含むwatch and wait(13例),リツキシマブ単剤(R単剤群18例),R-CHOP療法(12例),外科切除±化学療法(6例),放射線療法(1例)を行い,33例(66%)で完全寛解(CR),8例で部分寛解が得られ,9例は不変であった.観察期間(0.5~8.0年,平均3.1年)中に11例で再燃・進行を認めた.3年後の全生存率およびPFS率は各々98%および79%であった.消化管の複数領域に及ぶ病変の存在はPFSが不良となる傾向がみられた(p=0.07).R単剤群とR-CHOP群を比べると,後者でIV期例が多く,全例でCRが得られたが,3年後PFS率はR単剤群(65%)とR-CHOP群(83%)で差はなかった.【結論】消化管FLは十二指腸・空腸に高頻度に病変を認め,小腸内視鏡による評価が必須である.病期進行例にはR-CHOPが有効で,早期例にはリツキシマブ単剤療法が妥当と考えられる.特に消化管の複数領域に病変が存在する例では注意深い経過観察が必要と思われる.
索引用語