セッション情報 パネルディスカッション7

進行肝細胞癌に対する化学療法の治療戦略

タイトル PD7-1:

白金製剤を用いた肝動注・肝動脈化学塞栓療法不応例における薬物変更による再治療の意義

演者 近山 琢(埼玉医科大学病院消化器内科・肝臓内科)
共同演者 今井 幸紀(埼玉医科大学病院消化器内科・肝臓内科), 持田 智(埼玉医科大学病院消化器内科・肝臓内科)
抄録 【目的】肝切除,局所療法の適応とならない肝細胞癌は,白金製剤を用いた肝動注(TAI)ないし肝動脈化学塞栓療法(TACE)が第1選択であるが,これが奏功しない不応例が存在する.その際,分子標的療法を実施する場合が多いが,その前に白金製剤を変更して再治療する意義を検討した.【方法】対象は2010年2月~2012年7月にCDDPないしミリプラチンを用いてTAIまたはTACEを施行した肝細胞癌880例.1ヵ月後に効果判定し,治療が奏功しなかった場合は3ヶ月以内に白金製剤を変更してTAIないしTACEを実施し,1ヶ月後に治療効果を再判定した.ミリプラチンは腫瘍径に応じて最大120 mg,CDDPは体表面積あたり最大55 mg/m2を動注し,Vp因子と肝予備能に応じて,可能であれば多孔性ゼラチン粒による塞栓療法を追加した.治療効果はCT所見に基づいて,肝癌治療直接効果判定基準(TE)で判定し,更に腫瘍マーカーの推移を参考にした.【成績】CDDPが不応でミリプラチンを用いて再治療を実施したのが13例(M群).一方,ミリプラチンが不応でCDDPによって再治療したのが27例(C群).肝細胞癌のstage(III,IVA)は,M群が6例と7例,C群が12例と15例,Vp(0,1-2,3-4)はM群が4,4,5例,C群が14,6,7例,肝予備能(grade A,B,C)はM群が9,3,1例,C群が16,10,1例で,両群に差異は認められなかった.M群11例,C群20例の31例で治療効果判定が可能であり,M群の1例(9.1%)とC群の2例(10%)はTE3で腫瘍縮小が認められた.腫瘍マーカーはM群の2例(18.2%)とC群の4例(20%)で低下した.薬物変更後の累積生存率(6,12ヶ月)はM群61.9%,51.6%,C群77.1%,46.3%で差はなかった(p=0.604).【結語】白金製剤を用いたTAIないしTACEでは,治療効果が不良の場合でも薬物を変更すると抗腫瘍効果が得られる場合がある.分子標的薬の導入とともに検討する価値のある治療法であり,薬物変更が有用な症例の背景を明らかにするために,より多数例での検証が必要と考えられた.
索引用語