セッション情報 パネルディスカッション7

進行肝細胞癌に対する化学療法の治療戦略

タイトル PD7-8:

進行肝細胞癌に対する肝動注化学療法を中心とした治療戦略

演者 永松 洋明(公立八女総合病院肝臓内科)
共同演者 鳥村 拓司(久留米大学消化器内科), 佐田 通夫(久留米大学消化器内科)
抄録 【目的】当院では進行肝細胞癌(HCC)に対してcancer freeを目標に肝動注化学療法(HAIC)を中心に治療を行っている.HAICは治療に伴う肝機能低下などが危惧されるが,効果がみられると長期生存も可能となる.当院における進行HCCに対するHAICの治療成績をretrospectiveに検討した.【対象】2003年6月から2012年8月の期間,当院にてHAICを行った201例のHCC症例(Child Pugh A/B/C:101/77/23例,Stage III/IV-A/IV-B:79/107/15例)を対象とした.【方法】201例全例に皮下埋め込みリザーバーよりLow dose FPまたはNew FPでHAICを行った.PRが得られた症例では,可能であれば6カ月以内に肝切除やTACEなどの追加治療を行いリザーバーを抜去した.HAIC開始後累積生存期間(OS)をKaplan-Meier法で示す.条件によるOSの差はLog Rank検定で比較した.また肝外転移発症後の治療と予後についても検討した.【結果】全体の動注効果は,CR/PR/SD/PD:19/93/58/31例(奏効率:55.7%)で,HAIC開始後のOSは中央値(MST)で14カ月であった.肝機能別ではChild Pugh A/B/C:19/13/8カ月(P=0.002),効果別ではCR/PR/SD/PD:34/22/10/6カ月(P<0.001),cancer freeが得られたのは62例(30.8%)でMSTは33カ月であった.cancer freeが得られた症例では,治療回数の平均10.8回,治療後のChild-Pugh scoreは平均6.5であった.治療経過中肝外転移を認めたのは全体で54例(26.8%),このうち肝内病変がcancer freeの症例が17例で肝外転移出現後のMSTは19カ月であった.【結論】進行HCCに対するHAICにおいて肝機能良好で動注効果がみられると良好な成績が得られた.さらにcancer free症例では,肝機能が保持され長期生存が得られた.肝外転移が出現した場合も肝内病変がコントロールできていれば,肝機能が温存されソラフェニブ投与も可能となり,さらなる予後改善が得られた.進行HCCに対してはHAICを中心に治療を開始し,効果がなければ治療変更することが勧められる.
索引用語