抄録 |
【対象】対象は2003年から2011年まで当科にて肝動注化学療法(HAIC)またはソラフェニブ(Sora)にて治療した症例を対象について後ろ向きに検討した.肝動注化学療法には,4週で1サイクルのインターフェロン併用5-FU持続肝動注化学療法を基本として治療した.ソラフェニブ治療は全例800mgにて開始し副作用に応じて減量増加した.ソラフェニブの前治療または後治療に肝動注化学療法を行った症例は重複を避けるためソラフェニブ療法として検討した.治療効果判定はRECIST1.0ガイドラインを用い評価した.統計学的手法にはχ2検定,t検定,Kaplan-Meier法,log-rank testを用いた.【結果】対象症例は280例,HAIC 229例,Sora 51例,全症例の全生存期間(OS)はMSTで9.6ヵ月であった.無増悪生存期間(PFS)は3.2ヵ月であった.臨床背景では,年齢はSoraで有意に高く(68.3歳/65.3歳),PSもSoraで有意に良好(PS0 92%/78%),肝予備能もSoraで有意に良好で,Child-Pugh score(6.0/6.9),Child-Pugh分類A(74%/50%),B(26%/39%),C(0%/11%)であった.初発は肝動注でより多く(35%/8%).腫瘍径,腫瘍個数ともにHAICで進んでいた(3cm以上64%/36%,5個以上78%/47%),主要脈管侵襲はHAICで多く(48%/29%),遠隔転移陽性はSoraにより多かった(45%/18%).Stage(II,III,, IVA,IVB)は,17%/6%,31%/31%,34%/18%,18%,45%であった.全体の治療効果(CR/PR/SD/PD/NE)は,6%/23%/29%/37%/5%で,奏効率はHAICで有意に高く(29%/4%),腫瘍コントロール率は57%/57%と有意差はなかった.OSは,MSTがHAIC 9.4ヶ月,Sora 10.6ヵ月と有意差を認めず,PFSも3.2ヶ月,2.8ヵ月と差はなかった.遠隔転移例ではHAICのOSは有意に悪く(3.8ヵ月/6.5ヵ月),主要脈管侵襲例では差はみられなかった(5.7ヵ月/5.9ヵ月).【結語】HAICは肝予備能不良例が多く,Soraは腫瘍因子が進行している例に行われており背景は異なるが,遠隔転移例ではHAICの成績は不良でありSoraを考慮すべきあると考えられる.さらに治療時期や交絡因子について検討が必要であると考えられた. |