セッション情報 パネルディスカッション8

自己免疫性肝疾患の現状と問題点

タイトル PD8-1:

免疫学的末梢血解析からみた自己免疫性肝炎の病態

演者 海老沼 浩利(慶應義塾大学医学部消化器内科)
共同演者 齋藤 英胤(慶應義塾大学薬学部薬物治療学), 日比 紀文(慶應義塾大学医学部消化器内科)
抄録 【背景と目的】自己免疫性肝炎(AIH)は中年女性に好発し,通常は慢性肝炎の経過を辿る.免疫抑制療法が著効することから,原因として何らかの自己免疫学的機序が関与していると推察されるがその詳細は解明されていない.AIHの中には亜急性に経過し,肝不全に移行する急性発症型AIH(AAIH)が存在し,このAAIHでは末梢血中制御性T細胞(Treg)の割合が低く,Th17細胞の割合が多いことを今までに報告してきた.そこで,今回は慢性肝炎症例に焦点をあて,AAIH症例及びC型慢性肝炎(CHC)症例との比較を行った.【対象と方法】2000年から2011年に経験したAIH 28症例(未治療慢性肝炎11例,未治療AAIH9例,治療後AAIH8例),及びCHC45例,急性肝炎症例42例につき,Bio-PlexTMサスペンションアレイシステムによりサイトカイン・ケモカインを測定,比較検討した.同時に末梢血単核球のsubsetをflowcytometryにて解析した.【結果】AIH症例ではCHC症例に比較して,IL-1b,IL-1RA,IL-4,IL-5,IL-8,IL-9,IL-10,IL-17,GM-CSF,IFN-γ,IP-10,MCP-1,MIPといった多くのサイトカイン・ケモカインの増加が示された.しかし,これらの値は肝機能や肝病期によって影響を受けるため,AST,PLT値によって補正したところ,IL-17,IP-10,MCP-1,MIPといった自然免疫に関与するものがとりわけ高値であった.一方で,AAIH症例でもウイルス性急性肝炎と比較し,IL-17,MCP-1,MIP,TNF-αが増加しており,これらは慢性型AIHと比較しても高値であった.また,AIHでは慢性肝炎及びAAIHに共通して末梢血Tregの比率が低値であった.【結論】AAIHに限らずAIHでは,CHCと比較して多種多様なサイトカイン・ケモカインが増加しており,とりわけ自然免疫系の活性化,Tregの頻度が減少していることから,免疫寛容状態の破綻がAIHの病態に関与していると考えられた.
索引用語