抄録 |
【目的】自己免疫性肝炎(AIH)には,急性発症様の病型(急性肝炎期[AH]と急性増悪[AE])も存在し,特にAHでは非定型例が多く,診断に苦慮することが多い.急性肝炎期AIHの臨床像を明らかにすることを目的とした.【方法】1995年1月から2012年8月までに,当センターにて臨床的かつ病理学的にAIHと診断した122例(年齢55.2±14.0,男女比19:103)を対象とした.急性発症様の定義は,初診時に有症状かつALT400 U/l以上とし,それ以外を通常型とした.急性発症様では,肝障害の既往がなく肝組織像が新犬山分類でF1以下をAHとし,それ以外をAEとした.(1)患者背景(2)肝機能検査(3)自己免疫指標(4)病理学的所見(5)AIH score(6)治療経過について検討した.【結果】(1)AH22例,AE18例,通常型82例であり,AHでは年齢49.5±18.2歳,男女比5:17に対し,AE 54.3±15.5歳,3:15,通常型57.0±12.0歳,11:71であった.(2)ALTとPT活性はAH vs.その他(AE+通常型)で,1242±596 vs. 296±416 U/l,81.5±17 vs. 84.5±22%であった(p<0.01,=0.50).(3)80倍以上の抗核抗体上昇とIgGはAH vs.その他で,54.5%(12/22)vs. 82.0%(82/100),1625±572 vs. 2002±737 mg/dlであった(p<0.01,=0.01).(4)ロゼット形成,形質細胞浸潤,Zone 3の肝細胞虚脱は,AHとその他で,4.55%(1/22)vs. 27%(27/100),95.5%(21/22)vs. 92%(92/100),68.2%(15/22)vs. 37.0%(37/100)にみられた(p=0.02,0.56,<0.01).(5)revised AIH scoreとsimplified AIH scoreはAHとその他で,14.1±3.50 vs. 15.3±3.52,4.77±1.31 vs. 5.83±1.22であった(p=0.15,<0.01).(6)prednisolone投与によるALT正常化率はAHとその他で,94.4%(17/18)vs. 89.3%(53/59)であった(p=0.90).【結語】AHではAEや通常型と比較して自己免疫指標に乏しく,肝組織像ではロゼット形成は目立たず,Zone 3の肝細胞虚脱が特徴的である.simplified AIH scoreの有用性は低い.成因不明の急性肝炎では,急性肝炎期AIHの可能性も念頭におき,肝組織所見の詳細な検討が必要である. |