セッション情報 パネルディスカッション8

自己免疫性肝疾患の現状と問題点

タイトル PD8-5:

治療中止可能な自己免疫性肝炎の特徴

演者 有永 照子(久留米大学医学部内科学講座消化器内科部門)
共同演者 佐田 通夫(久留米大学医学部内科学講座消化器内科部門), 井出 達也(久留米大学医学部内科学講座消化器内科部門)
抄録 【目的】自己免疫性肝炎(AIH)はコルチコステロイド(CS)による治療が標準的な治療である.治療効果は概ね良好であるが再燃も多い.再燃回数が多ければ肝硬変への進行,肝癌の発症が多いことが報告されておりCS量の減量や中止には慎重にならざるを得ない.一方,長期CS治療による副作用も問題であり,特に感染症や骨粗鬆症には注意が必要である.そこで,今回AIHで治療中止可能な症例の特徴を明らかにするために最終観察状態を群別し比較検討した.
【対象と方法】当科及び関連病院のAIH 205例を対象とした.平均年齢は57.3歳(15-88歳),F:M=181:24,平均観察期間は86.7か月.最終観察時の状態により,無治療正常群(CR),治療正常群(BR),異常群(NR),死亡群(D)に分類した.診断時のAIH score,TB値,ALT値,ALP値,γGTP値,IgG値,PT(%),血小板数,肝硬変の有無,PSL治療の有無,治療効果,再燃の有無,発症様式を4群で比較検討した.
【成績】無治療正常群(CR)32例,治療正常群(BR)116例,異常群(NR)41例,死亡群(D)17例であった.治療中止可能な症例が15.6%(32/205)に認められた.CR群はTB値(6.9±8.1g/dl),ALT値(570.3±557.4IU/L)が有意に高く,IgG値(2711.9±1228.2mg/dl)は低い傾向であった.PSL治療歴は有意に少なかった(62.5%)が,治療例は全て効果良好で再燃も有意に少なかった(15.0%).急性発症例が62.5%(20例)で明らかに多く,肝硬変症例は9.4%(3例)と有意に少なかった.
【結論】15.6%の症例が治療中止可能であった.発症時に黄疸が出現するような急性発症症例はCS治療で再燃がなければ治療中止できる可能性がある.
索引用語