セッション情報 |
パネルディスカッション8
自己免疫性肝疾患の現状と問題点
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タイトル |
PD8-6:高齢者自己免疫性肝炎の臨床病理学的特徴と治療上の問題点
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演者 |
守屋 圭(奈良県立医科大学第3内科) |
共同演者 |
吉治 仁志(奈良県立医科大学第3内科), 福井 博(奈良県立医科大学第3内科) |
抄録 |
【目的】近年,本邦では欧米諸国と比較して高齢の自己免疫性肝炎(AIH)患者が多く報告されている.大部分の症例にはステロイド治療が奏効するが,高齢者は耐糖能障害など様々な合併症を有していることが多く,積極的な治療介入を躊躇することも少なくない.今回我々は,当科で経験したAIH症例を診断時の年齢が65歳未満の非高齢者と65歳以上の高齢者に分け,高齢者AIH患者の臨床病理学的特徴と治療上の問題点について検討した.【方法】1989年以降に当科で精査加療したAIH 171症例を対象に,臨床背景,組織学的病期,治療法などについて非高齢者群と高齢者群の2群間で比較検討を行った.なお,診断にはAIH国際診断基準スコアを用いた.【結果】対象患者の内訳は,非高齢者108例(男/女=16/92:平均年齢 45±12歳),高齢者63例(同=11/52:同67±7歳)であり,高齢者AIHは全AIHの37%を占め,75歳以上の後期高齢者も12例(7%)存在した.高齢者では初診時のトランスアミナーゼと総ビリルビンが低値である一方,線維化進展例が多く肝硬変症例も非高齢者に比し約2倍であった.そのため,治療による回復後でも血清アルブミン,コリンエステラーゼ,血小板数はいずれも低値であり肝予備能が低下していた.また,空腹時血糖およびHbA1cは非高齢者に比し高齢者で共に高値であり,耐糖能障害を併発しやすかった.高齢者AIHでは重症化例は低率(6% vs. 17%)であったが,重症化した場合の死亡率は非高齢者よりも明らかに高率(75% vs. 26%)であった.投与薬剤に関しては,UDCA投与量は両群間で差を認めなかったが,ステロイドおよび免疫抑制剤投与量は高齢者において有意に少なかった.【結論】全AIHの約4割を占める高齢者AIHでは線維化進展例が多く,一旦重症化すると急速に肝不全へ移行しやすいことが明らかとなった.高齢者であっても速やかな確定診断の後,耐糖能障害などの合併症に注意しながら十分量のステロイドによる積極的な治療介入を行うことが重要である. |
索引用語 |
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