セッション情報 パネルディスカッション8

自己免疫性肝疾患の現状と問題点

タイトル PD8-7:

NASHを合併した自己免疫性肝炎に関する検討

演者 高橋 敦史(福島県立医科大学消化器・リウマチ膠原病内科学)
共同演者 阿部 和道(福島県立医科大学消化器・リウマチ膠原病内科学), 大平 弘正(福島県立医科大学消化器・リウマチ膠原病内科学)
抄録 【背景】自己免疫性肝炎(AIH)の診断では,抗核抗体が約3割で陽性となる非アルコール性脂肪性肝疾患(NASH)との鑑別が必要で,まれにAIHとNASHのオーバーラップの症例も経験する.我々はこれまでNASH患者のAIH合併について報告したが,AIHでのNASH合併に関しては不明な点が多い.【目的】AIH診断時におけるNASH合併の有無とその特徴を明らかにする.【方法】AIH改訂版国際診断基準または簡易版スコアで疑診以上の70例(男性6例,女性64例 平均年齢53.2歳)を対象とし,診断時の肝生検像を再評価しNASHが疑われた症例の頻度とその特徴を検討した.さらに,BMI25を境に肥満の有無で2群にわけ,合併疾患,血液検査所見および肝組織所見の差異を検討した.【成績】AIHスコア疑診以上の70例中,病理組織学的にNASHの存在が疑われた症例は5例(7.1%)で3例はNASHとAIHのオーバーラップ,残り2例はAIHではなくNASHと考えられた.全例女性で年齢は2例が50歳台,残り3例は70歳台であった.全例BMI25以上であり,5例中4例で肝線維化が進行していた.AIHスコアは改訂版で5例全例が確診例で,簡易版は4例が確診例であった.5例中NASH1例を含む2例はステロイド治療なしで改善した.この5例を含め診断時にBMI25以上の肥満例は70例中22例(31.4%)であった.肥満群と非肥満群48例との比較では,年齢や脂質異常症,高血圧,糖尿病の合併頻度,また各種検査成績(AST,ALT,ALP,γGTP,TB,Alb,PT,IgG)や改訂版・簡易版AIHスコアに有意差を認めず,肝組織で脂肪化の頻度が肥満群で有意に高かった.【考案】AIHスコアで疑診以上の肥満例でNASHの合併やNASHが考慮される症例の存在を確認したが,低頻度であった.比較的高齢の肥満者で肝線維化の進行から,AIH発症後にNASHの要素が加わった可能性も推察された.【結論】高齢の肥満者のAIH診断においては,ステロイドがNASHを増悪させる可能性もあるため,肝組織所見でNASH合併が疑われた場合はAIHとNASH両者の病態を考慮した診療が必要と考えられた.
索引用語