セッション情報 |
パネルディスカッション8
自己免疫性肝疾患の現状と問題点
|
タイトル |
PD8-8:原発性胆汁性肝硬変の障害胆管におけるエネルギー代謝の変化
|
演者 |
原田 憲一(金沢大学大学院医学系研究科形態機能病理) |
共同演者 |
中沼 安二(金沢大学大学院医学系研究科形態機能病理) |
抄録 |
【目的】原発性胆汁性胆管硬変(PBC)は中高年女性に好発し,ピルピン酸脱水素酵素(PDC)を対応抗原とするAMAの出現,肝内小型胆管における慢性胆管炎と胆管消失が特徴である.PDC複合体はミトコンドリア内でピルピン酸からアセチルCoAへと変換する酵素で,解糖系エネルギー代謝系の重要な酵素である.今回,PBCのCNSDC特異的に,解糖系エネルギー代謝の障害およびPPARγ coactivator 1α(PGC-1α)/estrogen-related receptor α(ERRα)系を介する脂肪酸分解系のエネルギー代謝亢進を示唆する興味ある所見を得たので報告する.【方法】PBCおよび対照としてC型慢性肝炎,原発性硬化性胆管炎,自己免疫性肝炎,組織学的正常肝の肝針生検材料を用いて,PGC-1α,ERRα,pyruvate dehydrogenase kinase,isozyme 4(PDK4,PDC-E1αをリン酸化し酵素活性を阻害),PDC-E1αの発現を免疫組織化学的染色にて検討した.培養ヒト胆管細胞を用いて,PGC-1α,ERRα,PDK4,PDC-E1αのmRNA発現および培養液中の血清減量による発現の増減をPCR法にて検討した.【成績】PBCのCNSDCではPGC-1α,ERRαの核発現を特異的に認めたが,PBCの正常胆管や対照群の胆管では明らかな核発現を認めなかった.PDC-E1αの発現は,PBCおよび対照群の胆管で恒常的に発現していたが,PDK4の発現はPBCのCNSDCで発現亢進していた.培養ヒト胆管細胞からERRα,PGC-1α,PDK4,PDC-E1αのmRNAが検出され,培養液の血清減量によりPGC-1αの発現を誘導すると,PDK4の発現も有意に亢進した.【結語】PBCの障害胆管では,PGC-1α/ERRα系を介した脂肪酸分解系のエネルギー代謝が亢進していることが示唆された.また,PGC-1αにて誘導されるPDK4の発現亢進は,PDC-E1α酵素活性阻害によるピルピン酸からアセチルCoAへの変換障害を来たし,解糖系代謝の障害を来していることが示唆された.PBCの障害胆管では通常の胆管とは異なるエネルギー代謝へ変化しており,PBC特異的な胆管病変の形成およびAMAの発生に関与している可能性が示唆された. |
索引用語 |
|