セッション情報 パネルディスカッション8

自己免疫性肝疾患の現状と問題点

タイトル PD8-10:

PBCに対する薬物治療方針の現状~アンケート調査の結果から~

演者 田中 篤(帝京大学医学部内科学講座)
共同演者 中村 稔(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科肝臓病学講座/国立病院機構長崎医療センター臨床研究センター), 滝川 一(帝京大学医学部内科学講座)
抄録 【目的】2012年にPBC診療ガイドラインが発表され,第1選択薬はウルソデオキシコール酸(UDCA)とされている.しかし薬物治療の対象,UDCA効果判定の時期・基準,効果不良例に対する治療方針など,未だ十分なエビデンスやコンセンサスがない領域が存在する.今回われわれは本邦の肝専門医を対象としてPBCに対する薬物治療の現状を把握するためアンケート調査を行った.【方法】本調査は厚労省「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」班員,および国立病院機構の肝専門医に対するアンケート方式によった.「調査研究」班員には調査票をメールで送付し回答の返信を依頼した.国立病院機構の肝専門医に対しては会議の席上調査票を配布し,記入後回収した.【成績】「調査研究」班員47名,国立病院機構59名,計106名の肝専門医から回答を得た.PBCと診断した後,UDCA投与を開始する基準としては「ALPが正常上限1~1.5倍」という回答が62%と最も多く,次いで「正常上限1.5~2倍」が20%であったが,「基準値範囲内でも開始」との回答が16%存在した.UDCA初期投与量は「600mg/日」との回答が全体の84%であった.UDCAの効果判定の時期は「投与開始後3か月」「同6か月」との回答がそれぞれ46%・39%であり,かなり早い時期に効果判定がなされている傾向がみられた.UDCA効果不十分とする基準は「正常上限値にかかわりなくALP/GGTが治療前値と変わらない」が最も高頻度であった.UDCA効果不十分の場合の第2選択は,「UDCAを900mg/日へ増量」「ベザフィブラート400mg/日を追加」がそれぞれ57%,41%であった.以上の回答傾向は「調査研究」班員・国立病院機構に共通していた.【結論】PBCの薬物治療方針として,UDCAの投与開始基準,初期投与量については本邦の肝専門医の間でほぼコンセンサスが得られているが,投与効果判定の時期,および効果不十分と判断した際の治療方針については見解が分かれていた.
索引用語