セッション情報 パネルディスカッション9

非代償性肝硬変の合併症と予後

タイトル PD9-2:

肝硬変に合併する眠気に対する評価と加療

演者 市川 辰樹(長崎大学病院消化器内科)
共同演者 田浦 直太(長崎大学病院消化器内科), 中尾 一彦(長崎大学病院消化器内科)
抄録 【目的】多くの肝疾患の症例が入眠困難や睡眠中の覚醒の為睡眠薬を処方されており,また昼間の眠気の訴えも多い.肝硬変と睡眠障害の関係の報告は少ないが,密接な関係が推測される.そこで,私たちは肝疾患と睡眠の関係,と眠気に対する治療について検討した.【方法】1.肝硬変(LC)症例21例をエップワースの睡眠尺度(ESS)と肝疾患症状のスコア化にて評価し,肝不全経口栄養剤1包を夜食(LES)で投与する群(LES群)と200キロカロリーのおにぎりを夜食としてとる群(対照群)に振り分け,その症状の変化を治療開始4週目と8週目に評価した.2.LC55例を対象にNeurophysiological test(NPT)を施行しミニマル肝性脳症(MHE)と睡眠障害の関係を検討した.3.当科通院中の149名の慢性肝疾患症例を対象としてむずむず脚症候群(RLS)の合併率とRLSが睡眠障害(ピッツバーグ睡眠の質インデックス(PSQI))と生活の質(SF36)に及ぼす影響を検討した.【成績】1.対象のうちESS10点以上は5名(23%).LES群では肝疾患症状スコアは治療開始8週目に改善傾向を認めたが,ESSでは治療開始4週目に点数が減少した.2.NPTで3項目以上の異常を認めた場合をMHEとすると,MHEではChild-Pughスコアが高く,PSQI6点以上の群でMHEが多く認められた.3.肝疾患にはRLSを25例(17%)認め,PSQI6点以上が48%を占めた.RLSと肝障害には関連を認めなかった.RLS群ではPSQI総点数が高く,Mental componentの低下を起こしている.非RLS群でも40%にPSQI6点以上の症例が認められた.【結論】肝疾患における睡眠障害,眠気の合併は高率であった.その原因では肝疾患の17%にRLSを認めた.また睡眠障害においてMHE合併率が高く,LESにて眠気が改善することにより,睡眠障害の原因としてMHEも重要な原因として考えられる.MHEは肝障害度と関連があるがRLSには関連を認めていない.RLSとMHEの合併の可能性もあるが,MHEとRLSは治療を試みるべき疾患であり,眠気の改善は患者QOLの改善につながる可能性がある.
索引用語